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いじめの苛烈さは「継続的な『拷問』と評すべき」

 当時、中学校は和威さんへのいじめ内容の詳しいヒアリングさえ行っていなかった。取材でわかったのは、和威さんへのいじめが始まったきっかけは、中学入学前に、近所でエアガンを撃たれている女児を助けたことだった。

「後に僕のことをいじめる加害生徒たちが年下の女子をエアガンで撃っているのを見て、体が勝手に動いた。助けようという強い気持ちがあったわけではないけれど、自然にそうしていました。それを見た加害生徒の1人が『いい格好しやがって』と言ったのを覚えています。今あのときに戻っても、女児へのいじめを止めていると思います」(過去の和威さんへの取材)

高裁判決後の記者会見

 そして2012年4月に中学に入学した直後から、和威さんはいじめのターゲットにされてしまう。和威さんが受けたいじめの苛烈さは、後に行われた裁判で「本件は、『いじめ』という概念では捉えることができない」「継続的な『拷問』と評すべき」とされるほどだった。

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奪われた現金だけで100万円以上

 被害は、奪われた現金だけでも100万円以上にのぼる、母親の脳梗塞再発に備えて準備していた現金や、妹の貯金箱にあったお金などを「持ってこい」と奪い取られていた。

「中学1年生だった兄へのいじめは日に日に激しさが増していました。入学直後からエアガンで撃たれ、プロレスごっこと称しては暴力を受け、授業中に目の前でノコギリを振り回され、現金を脅し取られ、カッターナイフを腕に当たる直前まで振り落とされ、殺虫剤をかけられ、包丁を向けられる日々。10月に母が学校に通報した後に警察が聞き取り調査を行ったのですが、兄はとても調査に答えられるような状態ではなく、加害者たちへの聞き取りから主犯格の加害者5名は児童相談所へ通告となりました」(A子)

 後に、5月の宿泊訓練でも暴行はあったことがわかっている。激しい暴行のほか、首絞めやキックなどを受け、和威さんは「ぬいぐるみ状態で中の綿が飛び出すまで殴られたイメージ」と振り返っている。