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 母・まつを演じた牧瀬里穂は「面白いし、結構逞しく強い」と絶賛し、寿恵子が万太郎に嫁ぐ前夜、二人で寝ているシーンのリハーサルで感極まってしまったとき、浜辺が「(リハを)止めましょう。本番に取っておきましょう」と声をあげて実際にリハーサルを止めてしまった「男前なエピソード」を披露している(『週刊文春』9月28日号)。神木と浜辺のコンビネーションの良さは、すでにあちこちで語られている。

 内向的だった性格は、アッパーな役柄だった『賭ケグルイ』と映画『センセイ君主』(18年)を演じたことで明るくなったという。「役を演じることで、自分を解放できた」と振り返る(MOVIE WALKER 2020年8月14日)。

©文藝春秋

「女優が女優たらしめるのは自分の意識だけ」

 落ち込むことがあってもセルフケアに努めてきた。先輩の俳優からもらった「女優が女優たらしめるのは自分の意識だけ」という言葉に感銘を受けて、普段の生活に気をつけるようになった(高校生新聞ONLINE 2019年9月19日)。100%のコンディションで仕事に向かうため、プライベートは「ルーティン魔人」と化していると笑う(Onitsuka Tiger 2021年7月9日)。気合と努力一辺倒だった10代を過ぎ、力を抜くことも大事だと考えるようになった。

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 作品は自分で選んできた。生き方も自分で選んできた。「自分で決めたことはなるべく責任を取りたい」「これまでの選択に後悔したことはないかも」「『全部成功だったんだ!』と思い込むことも大事」と力強い言葉が並ぶ(MORE 2023年4月5日)。自分で自分の生き方を決めていくところが、どこか寿恵子の生き様と重なる。

映画『屍人荘の殺人』イベントにて。左から中村倫也、神木隆之介、浜辺美波 ©文藝春秋

 山崎貴監督『ゴジラ-1.0』では神木と3度コンビを組み、焼け野原となった終戦直後の日本で、一人で生きる女性を演じる。その後は本格的な恋愛映画『サイレントラブ』が控える。

 劣等感と不安に苛まれていた少女は、人々に安心感を与える俳優へと変化した。しかし、まだ20代前半、これからの変化の幅のほうが大きいはず。『ゴジラ-1.0』のプロデューサーは浜辺と神木を「令和の山口百恵と三浦友和コンビ」と称したが、山口百恵のように早々に引退することなく、たくさんの予想外の顔を見せてもらいたい。