「宮嶋さんとは東海研修会での指導対局で指したのが最初でしょうね。宮嶋さんだけでなく、藤井さん(聡太竜王・名人)、齊藤さん(裕也四段)など、当時の研修会員とは大体指していると思います。
自分が東海研修会幹事になったのはコロナ禍以降ですが、宮嶋さんが指導のために研修会へきてくれました。その時、どちらから声をかけたのかはわからないのですが、研究会が始まりました。ネットで将棋を指して、電話で感想戦という形式です。序盤研究、特に先手角換わりの研究が深いですね。
私も宮嶋さんも子どもの頃にアマ全国大会の代表経験があり(澤田は01年のアマ名人戦、宮嶋は09年のアマ竜王戦)、経歴が似ていることもあって注目していました。これからは棋士として上を目指してもらいたいですし、また研修会などでも東海地区の将棋の発展に尽くしてほしいですね」(澤田七段)
将棋としては長考派
「上野君が幼稚園か、小学1年かの時に、子ども教室に来たのが最初です。1手詰めや3手詰めなどの簡単な詰将棋を出したらすぐ詰まして『よくわかっているなあ』と感心しました。ところが実際に将棋を指させようとしたら、泣き出して帰ったことを覚えています。
私のところに再度来たのは、それから1年くらいしてからですかね。他の場所で指して自信をつけたのだと思います。当時の棋力はアマ4級くらいでしょうか。子どものころから人間的にもしっかりしていて、彼には怒った記憶がありません。将棋としては長考派でしたね。むしろ今の方が決断良く指せていると思います」(井上九段)
後輩に抜かれることはよくあること
10月2日に第1局が行われる、第54期新人王戦決勝三番勝負は、藤本渚四段VS上野裕寿四段という、井上門下同士の決戦となった。プロ入りで後輩に先を越された上野にとっては、追い付き借りを返す絶好の舞台だ。また、第1局は上野にとって棋士デビュー戦でもある。
「デビュー戦が大きな舞台なのはチャンスだと捉えています。注目されるので勝ちたい気持ちが強いです。藤本さんとは一門研究会で練習将棋をよく指すのでお互いの棋風は理解しています。相手は今勢いがありますが、兄弟子の意地を見せられるように集中して頑張ります!」
と、意気込みを語ってくれた。
そして門下対決を見守る井上九段は、
「プロ入りは上野君が先と思っていましたが、後輩に抜かれることはよくあることなので、抜きつ抜かれつで競ってもらえればと思います。今、藤本君は乗っているし(今年度の成績は第1局開始時点で21勝3敗。0.875は全棋士中勝率一位)、自信もつけている。上野君がどれだけやれるかということになりますが、彼は持ち時間が長いほうが力を発揮できるので、楽しみな三番勝負です。どっちにも頑張って欲しいですね」
と語った。