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プロ入りできたのは野球をさほど見なかったことが要因かも

 最後に、共同インタビュー後には四段昇段者を交えての打ち上げが行われたことにも触れておきたい。コロナ禍の下では自粛されていたが、2019年9月の第65回リーグ以来の復活である。新四段及び奨励会幹事、棋士仲間が焼肉をつつきつつ、杯を重ねた。

 主役の2人がともにスポーツ観戦が趣味ということで話も弾む。実は、筆者が2009年に取材したアマ竜王戦で宮嶋は「プロ棋士とプロ野球選手の両方になりたい」と語っていたことがある。そのことについて聞くと「奨励会入りしてからはさすがに将棋一本です。野球については(地元の)ドラゴンズの調子が最近はあまり……なので……」と。あるいはプロ入りできたのも、野球をさほど見なかったことが大きかったのかもしれないとも。

2009年の第22回アマ竜王戦に参加した宮嶋少年

 昭和時代からの竜党である筆者は何とも言えない気持ちになったが、振り返ってみると自分も一番見ていたのは黄金期ともいえる落合政権時代であった。そして宮嶋とまったく同じ「ブレイク要因」を、今期竜王挑戦を果たした伊藤匠七段が挙げたことも思い出した。

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自身の活躍がファンの心を引き付ける

 そして、もう一人の四段昇段者である上野は、繰り返すがタイガースファンなのである。当然ながら今年の試合はよく見ていたのではなかろうか。共同インタビューでは「師匠よりも熱意があると思います」(井上九段は棋界有数の虎党である。そのファン歴は40年以上とか)と語って、場に笑いが起きていた。

 インタビューの内容を知った井上九段は「彼がタイガースファンなのは知りませんでしたが、僕より熱意があるというのは生意気ですね。カチンときました」と笑っていた。

久しぶりに開催された昇段者を囲んでの打ち上げ

 自身の力で手にした四段昇段という喜びと、阪神タイガース優勝に対する嬉しさについて、上野は「自分で勝ち取った喜びは、それまでの努力や苦労なども自分で分かっているため特別なもので、タイガースファンとして与えられる喜びは、純粋に嬉しい気分にしてくれるものです」と語る。

 そして今後は将棋ファンに喜びを与える側になることについて「棋士としての自覚を持つことと、強くなる為に日々努力していくことが、ファンの方に喜んで頂くために大切だと考えています」と思いを述べた。

 藤井竜王・名人を例に挙げるまでもなく、ファンの心を引き付けるのは何といっても自身の活躍を見せることである。新四段の2人には自身の将棋を通して、ファンの心をつかむ活躍を見せてほしいと思う。

写真=相崎修司

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