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AVの中に「男性」は映らないほうがいい

──男性向けAVの中では、「男性」という存在はできるだけ排除される?

服部 はい。よっぽどのスター男優でもなければ、名前も載りません。セックスが始まると、男性、特にその顔は、できるだけ映らないほうが好まれます。男優自身がカメラを持つ「ハメ撮り」などは、その典型でしょう。

「男性の視点」から見た画面の構図。男性が手前、女性が奥に配置され、カメラは男性の視線と同化する

──そうですね。カメラを持っていると、自分の顔を撮るのは難しそうです。

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服部 男性向けAVは、カメラの視線を通じて男優と一体化して、そこに映る女優とセックスしている感覚を与えるものがほとんどです。だから男性向けAVの男優は、一体化するための空っぽな“器”に徹する存在でした。

セックスする男女を「客観視」するカメラ

──女性向けAVは、「見る対象」として男性を撮ることを始めたんですね。

服部 そうですね。ところが、「女性向けAVでは視線が反対だ」という当たり前の話では終わらないのが、面白いところです。女性視点はたしかに革新的でしたが、女性向けAVは「第三者視点」が多いのも特徴なんです。

──第三者視点、とは?

服部 男女どちらの視点でもない、客観的な視点です。男女2人を映すので、カメラは少し引いた位置になります。

第三者視点では、男女が左右や上下に配置され、カメラは2人を捉える。広がりのある構図となる

 一人称視点で疑似セックスに没入するのもたしかに楽しいですが、映像の世界に巻き込まれるのは、ある意味で恐怖です。第三者視点でも、視聴者は登場人物と同一化できますが、切り離された世界として安心して見られます。

『四畳半ダーリン 其の二 -NO MONEY NO LOVE?!-』(SILK LABO)のジャケット。彼氏でも彼女でもない「第三者視点」によるカットが多用されている

 だから女性向けAVでは、「盗撮」っぽい視点が人気なんです。