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 名古屋駅の桜通口といったら、シンボルになっているのは駅ビルそのものである。高さ200m級の高層ビルがふたつ聳えるその名もJRセントラルタワーズ。百貨店のタカシマヤやホテル、オフィスなどが入る名古屋駅一帯の中核をなすビルだ。ちなみに、JR東海の本社もここに。高いところから新幹線や在来線を見下ろし……見守っているのである。加えてJRゲートタワーというもうひとつの高層ビルも建っている。

 この高層駅ビルを中心に、駅前には大名古屋ビルヂング、名古屋ビルディング、ミッドランドスクエア、モード学園スパイラルタワーズなど、大きなビルがずらりと並ぶ。

 JR在来線の線路に隣接するように、名鉄百貨店や近鉄パッセといった私鉄系の商業施設、駅前から東に延びる桜通・錦通というふたつの大通り沿いにもオフィスを中心にビルまたビル、コンクリートジャングルが広がっている。名古屋駅前は、まさに名古屋で随一の高層ビル街といっていい。

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 百貨店などを中心に商業施設も充実しているし、ミッドランドスクエアの1階部分には大通りに面してハイブランドのショップもずらり。地下街などをうまく使えば、名古屋駅の周辺を少し歩くだけで、いわゆる“名古屋メシ”の類いも味わえる。さらに、ちょっと離れたところには居酒屋などが集まるようなゾーンも用意されているし、東横インなどのビジネスホテルもある。

 さらにさらに、駅前から少し南東に行ったところには、柳橋中央市場という雑多な雰囲気が漂う市場町まで。ブランドショップもある高層ビル群のすぐ裏手という場所ながら、水産物を中心に約300店舗が軒を連ね、活気に満ちあふれている。

 なんとこの市場が成立したのは100年以上前のこと。1890年代に現在の名古屋駅南側から移転し、1910年に中央市場としての形が確立した。名古屋駅のすぐ目の前という立地から、周辺の開発がどんどん進む中でも市場町として生き残って現在まで名古屋市民の台所であり続けてきた。観光客向けの市場とは少々違う趣だが、駅の近くにこうした市場があるあたりも、名古屋らしさのひとつなのかもしれない。

 

葦が茂るばかりの沼地だった“名駅”一帯

 このように、名古屋駅の東側(桜通口側)を少し歩くだけで、巨大な駅ビルからオフィスビル群、飲食店の集まる歓楽街、昔ながらの庶民派市場まで、あらゆるものが揃っている。そしてこの名古屋駅周辺の一帯、なんと住所が「名駅」である。

 名駅とは名古屋駅を短縮した通称で、それがそのまま地名にも取り入れられているのだ。「名駅」という地名は、名古屋市中村区・西区にまたがっていて、中村区には名駅一丁目から五丁目、西区には名駅一丁目から三丁目。

 地元の人たちも、名古屋駅のことを「名駅」と略して呼ぶことが多いらしい。一度タクシーに乗って「名古屋駅にお願いします」と伝えたら、運転手さんに「ああ、名駅ね」と返されたことがあった。