「どういうこと!? 気持ち悪っ!」

 ダイアン・津田は、“自分”が密着取材されたVTRを見て叫んだ。ゲストとしてMCの麒麟・川島からスタジオに呼び込まれ「密着取材させていただきました」と言われたときも「されてないですよ」と困惑。「またまたぁ」と笑う川島は構わず番組を進行していく。VTRに映っているのは確かに津田。髪型へのこだわりを語ったり、健康志向の高いカフェで朝食を取ったりしている。しかし、どこか違和感がある。そう、これはAIで顔を入れ替える「ディープフェイク」という技術を使って作った映像。目や鼻、口を認識して処理されるため、物を食べたり、顔の角度によっては映像が乱れてしまう。その絶妙な違和感が独特な可笑しみを生んでいる。

 この『カワシマの穴』は、昨年末に第1弾が放送され、同様の手法でMCの川島に“密着”。視聴者を騒然とさせた。フットボールアワー・後藤に“密着”した第2弾を経て、今回の第3弾が放送された。

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麒麟・川島明 ©文藝春秋

 エンディングで種明かしされるが最初に津田に扮していたのは、彼のモノマネを得意とするTHIS IS パンの岡下。だから声も似ているため、本物の密着映像と見間違われてもおかしくない。しかし、酵素風呂エステに入り出てくると体格が変わり、体毛も濃くなっている。その口調は明らかにジローラモ。彼は津田のウソみたいな本当の番組『ダイアン津田のバーディーチャンす~』(東海テレビ)の女性共演者と一緒に飲み、セクハラスレスレのスキンシップを取るのだ。ウソと本当が混在しているから面白い。さらに津田が突如マッチョに。津田のギャグ「ゴイゴイスー」をひたすら繰り返しながら筋トレしているのは、なかやまきんに君だ。もうここまで来ると、正体を隠す気はなくバカバカしさが突き抜けていく。最先端の技術のスゴさと未熟さを面白がるだけで終わらずに、遊び尽くして、くだらない笑いにしているのがとてもいい。

 さらに今回から「芸人解体新書」と題した新企画も。三四郎・小宮の本人も気づいていない魅力を紐解くというもの。「ワードセンス」「ファッションセンス」のスゴさを虚実ないまぜで紹介していき、最後は「シックスセンス」。小宮のツッコミフレーズ「◯◯であれ!」は予言の言葉だとして、その“証拠”が示されていく。さらに学生時代の小宮が手のひらに「日」という文字を書いて写っている写真があるが、この形もある場所と完全に一致するとこじつけ。小宮の真っ当なツッコミを受け流しながら、次々と都市伝説とも陰謀論ともいえる話が作られていく。どちらの企画もひたすらバカバカしいのだが、仄かに恐ろしさもあって妙な余韻が残る番組だった。

INFORMATION

『カワシマの穴』
日本テレビ 不定期
https://www.ntv.co.jp/topics/articles/19m5t6vaemcsj5mdma.html