三国時代の天才的軍師、諸葛孔明が功成らず病死した瞬間、一八〇〇年の時空を越えて、ハロウィンの渋谷に転生する。

 悪魔メイクの若者たちを見て、向井理が演じる孔明は、ここは地獄と確信する。孔明を見て喜ぶ連中は彼をライブハウスに誘う。

 そのときステージで歌っていたのが、デビューを夢みるシンガーの卵、月見英子(上白石萌歌)だった。

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 酒を飲まされた孔明に、英子の声は天女の歌かと思えた。彼女は小林(森山未來)が経営するライブハウスでバイトしている。

上白石萌歌 ©文藝春秋

 オーナーは一見、強面で堅気に見えない。ところが孔明の姿を見て、三国志マニアのコスプレーヤーと思って質問を試みると、孔明は蜀で劉備(ディーン・フジオカ)に仕えていたころの経験を語る。ヤバイ服とメイクでキメたオーナーは少し嬉しそうに「おまえ、チョー孔明じゃん」と笑い、孔明をバイトに雇う。

 他愛ない話なの。孔明をおかしなコスプレ男と思っている英子に、古代からの転生を語っても「設定が甘っ!」と一蹴される。

 しかし孔明は英子の歌唱力を絶讃し「民草(たみくさ)」のために歌うべき、そして私が軍師になりましょうと宣言。自信のない英子に少し希望が湧く。オーナーも魏や呉との戦闘を語りつつ、軍師・孔明の策をプッシュする。英子をディーバに。

 三人を中心に話はテンポ良く進む。向井理って、なんか興味が湧かなかったけど、古代中国服を着てマジメな顔して奇策で英子を売りだす姿が笑えるの。コメディ、合ってるね。

 でも一番の儲け役は、一見ヤバそうだけど三国志オタクを演じた森山未來だ。英子が言うまでもなく、設定の甘い転生譚で、バリバリの存在感だしてる。

 上白石萌歌の評価はネットでも分かれる。ライブの歌がダメという人もいる。でも曲を変えれば済む話だ。

 萌歌ちゃん、『ペンディングトレイン』や『警視庁アウトサイダー』でも惜しい使われ方をしている。すぐに熱だしてた『ちむどんどん』の歌子役の方が、まだしも個性が出ていた。

 彼女ね、ウォン・カーウァイ監督の大ファンだったりするシネフィルです。

 かつて活劇物に出ていたマギー・チャンがウォン・カーウァイと出会って香港映画の女王になったように、もっと複雑な、笑顔を見せない難役に挑戦すると新境地が開けるかもと、軍師カメワダは思うのだが。

 第一話で登場した人気シンガー(菅原小春)との戦いは軍師の計略で勝ったが次戦も楽しみ。大河『いだてん』で人見絹枝を演じた菅原と、前畑秀子役の萌歌の再戦は楽しみだ。

 渋谷区長はハロウィンに来るなと言うが、孔明だって来るんだ。軽そうなドラマだが、こんな時代だから、孔明が軍師として求められた。

INFORMATION

『パリピ孔明』
フジテレビ 水 22:00~
https://www.fujitv.co.jp/paripikoumei/