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「加害者たちがSNSで楽しそうにしているのを見て…」

 しかし20年ごろ、ヒロシさんをイジメた生徒たちが楽しそうにしている投稿をSNSで見つけてしまったことをきっかけに、当時の感情が再燃し症状が一気に悪化したという。

 21年6月に、中学時代に受けていたイジメの損害賠償を求めて民事訴訟に踏み切った。

「裁判をしようと思ったきっかけは、加害者たちがSNSで楽しそうにしているのを見たからです。自分だけがこんな思いをしている。勝てるかどうかはわかりませんでしたが、加害者にも、僕が苦しんできたことを感じて欲しかった。しかし裁判では、加害者の言い分が信用できるかのように判断され、イジメの事実認定すらしてもらえず、ショックでした。

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 中2時の担任はこちら側の証人として協力してくれました。このときは感謝していましたが、しかし裁判では、『掃除の時間の暴行事件を見ていない』『僕のアザも確認していない』と被告側に有利な証言をしたんです。担任は絶対にアザを確認していたのに……。打ち合わせのときにも、『(ヒロシさんが)床に転がっていた』と言ったんです。小馬鹿にされている表現のように感じました。ただ、裁判では言わなかった。もしかすると、加害生徒たちから恨まれるかもしれないから言わなかったかもしれない」(ヒロシさん)

 

 担任教師の証言が争点だったが、22年9月に横浜地裁は「担任は暴行事件そのものを見ておらず、経緯が明らかになっていない」と結論づけ、ヒロシさん側の敗訴が確定した。

 2013年に制定されたいじめ防止対策推進法では、暴行があったと証明されれば「いじめ重大事態」に認定され、学校か教育委員会による調査が義務付けられている。しかしヒロシさんがイジメを受けたのは2006年で、法律ができる以前の出来事だった。ヒロシさんは「当時きちんと調査し、誰が悪いのかはっきりさせてくれれば、今のようになっていなかったと思う」と無念さを口にしている。