恰好いいよ。未来からきたタイムパトロール(以下、TP)隊員、井浦翔(かける)を演じる永山瑛太が絶品。
番宣ではSFラブコメディーと呼ばれる『時をかけるな、恋人たち』だが、相手役の吉岡里帆との息もピッタリ。一見軽いけどセンスの良さで楽しませる。
未来ではタイムボードなんていうキックボードみたいな乗り物で、誰もがお手軽に時間旅行を楽しんでいる。でも悪い奴も。過去に飛んでマンモスの肉を売買するルーパーイーツ。未来の人気映画を過去で流す26世紀フォックスとか。
そんなことされると歴史が改変されちゃう。それを取り締まるのがTPだ。
派手なTPスーツの瑛太がクールでね。一方の常盤廻(めぐ/吉岡里帆)は広告代理店で、柚子胡椒キャラメルを売るのに必死だ。
仕事はきちんとやるし、後輩の面倒見もいい。得意技は“辻褄合わせ”で、同僚のミスもフォローする。しかしそんな性格が仇になって、恋はさっぱり。
気がありそうな後輩が、さっさと婚約し、あーあ、私こんな生活ずっと続けんのかあと、公園のベンチで落ち込んでいたら、突然ベンチがストーンと落下。
地下にある、時空管理局“令和五年・世田谷基地”の面々が彼女を取り囲む。
「やっと会えた、メグ」と訳のわからない言葉を発して彼女を脅かすのがカケル役の瑛太だ。
違法トラベラーの横行に手を焼き、人手も足りないからTPの令和職員になって欲しいと無茶な勧誘だ。会社の仕事と、TP業務で二足のわらじのメグ。
初仕事は、音楽好きな未来人の摘発だ。令和の音楽を好きな青年が、ストリートで歌う女の子に熱を上げ、マネージャーになって令和に違法滞在している。青年を未来に送還し、二人の記憶は消去した。
記憶の消失。時間SFの泣かせどころだ。切ない仕事を終えたメグは、さっき「やっと会えた」って言ったよねと何気なく訊く。
するとカケルが「僕はまたキミに会うため、この時代にやってきた」と衝撃の告白をする。嗚呼。未来人と過去人の禁断の恋だ。
ロバート・F・ヤングの「たんぽぽ娘」では、山小屋で休暇中の中年男が、未来からきたという二十歳の女性と出会う。男には二十年前、恋に落ちた妻がいる。妻と会ったときにも似た感情。若い女は、あと一回しかタイムマシンが使えないと男に伝えて去る。妻が留守のとき、男は妻のスーツケースを落としてしまう。すると、中からは若い女が着ていたドレスが……。いい話でしょ。
恋の違法トラベラーを摘発しつつ、メグとカケルの距離は縮まる。かつて恋をして記憶を消されたメグが、今度はカケルとの恋を成就できるのか。甘くてポップ。そして切ない傑作ドラマだ。
INFORMATION
『時をかけるな、恋人たち』
フジテレビ系 火 23:00~
https://www.ktv.jp/tokikake/