ダンサー、役者、アーティスト。ひとりの表現者として、国も地域も領域もあらゆる境界線を軽やかに横断しながら活動する森山未來さん(39)はいま、神戸市・北野にいる。

 東京、神戸、そして海外……。森山さんは、ひとつの場所にとどまらず、なぜ多拠点での活動を選んだのだろうか。(全2回の1回目/続きを読む)

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拠点を定めず出会った流れに身を委ねたい

――東京とは別に、神戸に拠点を持たれたのですよね。こちらでの生活はいかがですか?

森山未來さん(以下、森山) 東京が1/3、神戸が1/3、残りの1/3はそれ以外。一応、二拠点という感じになっていますけど、どちらかというと多拠点、あるいは無拠点に近いものはあるかもしれないですね。

©榎本麻美/文藝春秋

――無拠点?

森山 「無」っていうと言い過ぎかもしれないですけど、なんていうんですかねえ、神戸にはもちろん想いを持って活動していますし、日本での仕事のメインは東京になってしまうので、そのたびに東京には向かわなければならない。

 たとえばパソコンで仕事ができる人だったら移動する必要すらないと思いますが、身体を素材として僕は動いているので、どこかを拠点にしなきゃいけないという考え方でいることのほうが、ちょっとストレスを感じる時もあります。神戸に移ったから神戸のことをとか、東京にいるから東京のことをじゃなくて、その先で出会った流れに身を委ねているくらいのほうがいいかなと。「土着」というものに関しても考えてはいますが、どんどんこだわりがなくなっているというか、ないほうが楽だなというふうになっているかもしれないです。

――数ある都市の中から、神戸を選ばれたのはなぜでしょう?

森山 たまたま、なんですけどねぇ。

――すみません、質問しておきながら恐縮ですが、なぜみんな移住の理由を知りたがるんでしょうね。聞かれ続けるとうんざりしますし、「たまたまです」と正直に答えても相手は納得してくれないですし。

森山 そうそう、そうなんですよね(笑)。まあ、以前から海外に拠点を持ちたいという思いがあって、計画まで立てていたものがコロナ禍で頓挫して。で、国内を見回した時に神戸という場所があるポテンシャルを持っているなって思った瞬間があったのと、移住を考えていたタイミングに神戸での仕事が長く続いたということも影響しています。