最新出演映画「ほかげ」(塚本晋也監督)では片腕が動かない謎の男。放映中のドラマ「パリピ孔明」(フジテレビ系)では三国志オタクのライブハウスオーナー。2021年東京五輪では白い衣装に身を包んで鎮魂の舞を踊り、観る人の心を強く震わせた森山さん。
「魅力を感じる部分はたくさんあるんだけれど…」と言いながらも、日本の映画界をとりまく環境に対する胸の内を明かしてくれた。(全2回の2回目/前編を読む)
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効率重視の東京では、通り一遍になって似通っていく
――神戸はお好きですか?
森山 神戸、好きですよ、うん。
――先ほど、神戸にはポテンシャルがあると。
森山 地理的な多様性と、文化としての流動性があって、自分の性に合っているなあと。
東京ももちろんすごく面白い街ではあるし、日本の何かしらは集まっていて魅力的ではあるんですけど、効率を重視して同じスピードで物事が動いている感じに、ある種飽きる。
――飽きるという言葉だけを捉えると、仕事でも人でもそのものが手元にあるから飽きるという感覚があって、ある意味では健康的なのかなと。そのもの自体を失っていないというか。
森山 飽きたっていう言葉をわかりやすく使ってしまっているけど、東京には何かに消費されるためにものをつくるという搾取の構造がもちろんあって。それはどこでも絶対にそうはなるんですけど、スピードが上がると必然的に効率性が重視されて、結果コミュニケーションやクリエーションのプロセスが通り一遍になっていくというか、似通うと思うんです。勝手に僕が感じていることかもしれませんが。
「結局、東京は飽きたって言葉に尽きるのかな」
――それを飽きたという言葉で。
森山 自分のアプローチの仕方いかんなのかもしれないですけど、単純に健康的に、チャレンジングなことができる環境を東京で見つけるのはなかなか難しいなと。パフォーマンスに関しては、気づいたら僕ほとんど横浜でやってんなとか。
――たしかに。
森山 大きな商業的なものは東京でやることはままあるけども、その中ではクリエーション以前に、効率性を上げるために生まれたヒエラルキーが生み出す、コミュニケーションの軋轢と向き合うことに時間が割かれることがとても多いです。
スピード感に関しては、その最短距離でどれくらいのメリットを出せるかが基本的に課されちゃいますよね。それをオーガナイズするためにはそのスピード感に合わせたプロデュースの方法を取らなければならない。
逆にそのプロフェッショナルな感じは、神戸にいるとそれはそれでいいなと思うこともあり(笑)、どちらが良いとか悪いではないなあと思うので、まあ結局、東京は飽きたって言葉に尽きるのかな。