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「神戸にも腰を据えるつもりはないんです」多拠点生活を続ける森山未來(39)がひとつの場所にとどまらない“納得の理由”

森山未來さんインタビュー#1

2023/11/11
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なぜひとつの場所にとどまらない生き方に…?

――どういったお仕事ですか?

森山 アーティスト・イン・レジデンス、いわゆる滞在制作のことを、略して「AIR」って呼ぶんですけど、そのシステムを使ってクリエーションしたり、リサーチしたり、個人的に10年くらい前から好んで採用している制作スタイルなんですけど。2021年の下半期から半年くらい、振付やリサーチの仕事で神戸に滞在していました。その時に関わったふたつの文化施設が、国内外からアーティストを招聘して作品を制作・発表してもらうレジデンスプログラムを持っているのに、どちらも肝心の滞在スペースがない、あるいは足りていなかった。

 で、「どこかいいところないですか」っていろんな人に聞いて回るうちに、そういった滞在施設が必要だと以前から考えていた有志の方たちが、AIRを立ち上げようとこちらの物件を見つけてこられて、せっかくなので一緒にどうですかっていうことで。

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©榎本麻美/文藝春秋

――それがまさにここ、2022年4月の設立から森山さんが運営メンバーのひとりとして関わっていらっしゃる「Artist in Residence in KOBE(AiRK)」。

森山 60年くらい前に建てられた外国人向けのマンションで、天井がちょっと高いんですよ。ワンフロアに一世帯が住むような設計で、キッチンの横にはナニーズルームがあったりして。間もなくポートランドのアーティストグループが滞在する予定です。

――森山さんは以前、ひとつの場所にとどまっていられない、そういう性分だからいろんな場所に移動してインスピレーションを得ながら制作活動をしていきたいということをおっしゃっていました。それと、神戸に新たな拠点を得たことは、感覚としてまた違うものでしょうか? 

森山 コロナ禍以降、感覚が変わったのは間違いがなくて。いまでも仕事があれば海外に出ちゃうんですけど、いわゆるグローバリゼーションに対する考え方は、この3年で変わったはずなんですよ。世界中が経済的に一気に停滞して、その損失を取り戻すためにまたツーリズムに力を入れるなどして、グローバリズムを回復させる動きにはなっているけど、エネルギー問題も含めていろんな意味でもう無理だって、すでにみんな気づいているはずなんですよね。

――はい。