そば粉は熊本県産、茨城県産、北海道産、長野県産の厳選されたものを使用している。今日のそば粉は北海道産のキタワセ種の新そば。練るところまで瀬戸さんが行い、伸しと切りは製麺機で行っている。粉によっては湯ねり(少しだけ熱湯をそば粉にかけてつなぎの核をつくり練っていく方法)をする場合もあるという。今日の茹で時間は28秒だという。期待が膨らむ。
蕎麦粉の味を多面的に味わってもらいたい
注文の間に、なぜ「粋に味わう MISOCAのとき」を出店することになったのか、その経緯を訊いてみた。「そば粉の味をもっと多面的に味わってもらいたいと思うようになったのです」と開口一番話し出した。それは次の様なことのようだ。
瀬戸さんは20代からカフェやイタリアンで働き、その後立ち食いそば屋の店長として製麺や麺茹で、天ぷらの調理などを経験した。30代になって鎌倉のそば店の支店で店長として勤務。その後横浜に自分のそば店を出店したという経歴を持つ。
瀬戸さんは立ち食いそば屋で働いてそば調理のイロハはすべて学び、老舗店では専門店としての品格や所作を学び、十割そばの魅力も見出した。
「しかし、そばの実には麺としてのそばだけでなく、もっと魅力があるのではないか」と考えるようになったという。そこで、従来の業態としてのそば専門店という垣根を越えて、「もっと柔軟にそばの多様な商品を開発することができるのでは」と考えるに至ったという。
従来の専門店の味を否定するわけではなく、「もっと純粋にそばを味わいたい。そばの実の力で生活に彩りをもたらしたい。そういう視点からスタートし、そばの多様な商品を提供していきたい」と考えるようになったというわけである。
しっとりときめの細かい食感とコシ
4~5分で十割そばの「天ぷらせいろ(海老天)」が登場した。麺線はやや太め色は淡くやや明るめな色をしている。まずそばをひとくち。しっとりときめの細かい食感と、十分なコシが同居する。なかなか上品なそばである。辛汁は鰹節を中心に出汁をとったこれもよい味である。こんなに素敵なそばが味わえるとは幸運である。茹で前155グラムというから量も多い。しかも、食べ終えたざるに短いそばが1つもなかった。十割そばがちゃんとつながっている証拠である。海老天も注文後揚げてくれるのでカラッとした仕上がりである。
すべて手打ちではなく、一部機械打ちを利用するのも既存のシステムにとらわれない実験的な試みだという。「十分うまい十割そばがこの方法で打てるのなら、もっと世界が広がるのでは」と瀬戸さんは熱く語る。