党統戦部の関係者が寺に出⼊りする
事実、日本国内の中国語紙『中文導報』WEB版や日本福建経済文化促進会の中国語公式ホームページの記事によると、林文清は2016年9月1日、中国共産党福清市委員会の統一戦線工作部長・陳存楓や、日本福建経済文化促進会の会長らをともなって萬福寺を訪問し、黄檗宗管長の近藤博道氏と座談会をおこなっている。
また、福清黄檗文化促進会が中国のポータルサイト『捜狐』に2019年10月4日付けで配信した記事からは、林文清は同年9月27日、党中央統戦部の招待を受ける形で、北京で行われた建国70周年の記念活動に参加したことが確認できる。
林文清や彼の団体が、党の統戦部と非常に深い関係を持っていることは疑いないだろう(林文清は2021年春、秋葉原の海外派出所と同一住所にある在日華人団体の幹部と面会していたことも確認されている)。
いっぽう、黄檗ランタンフェスティバルの協賛をおこなった日本福建経済文化促進会も、同会のイベントに福清市の統戦部関係者がしばしば出席していることが公式ホームページから確認できる。また、2016年6月12日には党中央統戦部副部長(当時)の譚天星が接見した在日華僑の訪中団のメンバーに、同会の会長が加わっている。こちらも統戦部と関係が深いとみていい。
日本の伝統仏教宗派である黄檗宗は、こうした人たちからの浸透工作を受けているのである。ほか、コロナ禍以降は党統戦部とは別部門である中国外交部の駐大阪総領事館からのアプローチも盛んになった。SNSで愛国的な暴言を連発している駐大阪総領事の薛剣は、2021年12月から翌年にかけて、1年間に3回も萬福寺側と接触しているほどだ。
「熱⼼な中国⼈信者」を装うエージェント
「統一戦線工作だとか、そういうことはまったく知らなかった。林文清さんに連れられて(福清市党統戦部の部長が)来ていたことも知らなかった。中国とは文化がつながっていることもありますし、友好的な交流をするのはよいことだと……」
「薛剣さんについても、ネットで炎上したことがあるという話を小耳には挟んだが、ご本人は礼儀正しい感じの良い人。寺に来たときは、やはり『熱心な信者』のように見えた」
黄檗宗側に電話で事情を問い合わせると、僧侶の一人は困惑してそう話した。多くの仏教徒が敬意を払う、チベット仏教の精神的指導者のダライ・ラマ14世について、薛剣が「詐欺師」などと非難していることもまったく知らなかったという。