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宇治の伝統寺院が中華オブジェに乗っ取られた? 中国共産党「浸透工作」の驚愕の実態

2023/12/12

genre : ライフ, 社会, 中国

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メンバー1000⼈の中国⼈訪⽇団が寺にくる

 2016年11月に登記がなされた黄檗文化促進会は、その前年4月に中国福建省で成立した福清黄檗文化促進会と対をなす組織だ(実際は福建側の団体に呼応して成立したとみられる)。福清黄檗文化促進会の会長は、福建省福清市出身の林文青という人物である。

 公開情報に当たる限り、彼らと萬福寺の最初の大規模な接触は2016年6月1日。隠元禅師の来日362年(363年とする報道もあり)法要に、林文青率いる福清黄檗文化促進会が、中国僧35人と在日華人ら合計200人を引き連れて突如参加したことだ。さらに同年8月には、黄檗宗の大寺院がある長崎に向けて、林文青が団長を務める1000人規模の黄檗文化交流団が来日している。

萬福寺の本堂前の庭には、お世辞にも上⼿とはいえない天⼈が描かれたラソタソが⼤量に並べられていた。もちろん夜になると光る 撮影 Soichiro Koriyama

「具体的な年は忘れましたが、いまから7~8年前のことです。林文青さんは、黄檗宗と隠元禅師に興味がある、とおっしゃって寺にいらっしゃったので、当時の宗門の教学部長が寺をご案内した。非常に熱意がある様子で、私たちも知らないような隠元禅師のお話もよくご存知になっている。すごく熱心な信者さんだなあ、と思って受け入れたのです」

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 萬福寺側の高僧の一人は、当時の林文青についてそう証言する。萬福寺の寺院規模からすれば大きな金額ではないとはいえ、中国側からは数百万円単位の寄付もおこなわれた。

中国⼈団体が萬福寺の境内に持ち込んだ怪しいおもちゃ。遊ぶのは有料 撮影 Soichiro Koriyama

 なお、中国政府寄りの情報が多い『月刊中国ニュース』2019年5月号に掲載された本人のインタビュー記事によると、林文清は自分がはじめて隠元のことを知ったのは2015年初頭だったと話している。これが事実とすれば、もともと黄檗宗についての知識がゼロに近かった人物が、隠元を知ってからたった数ヶ月で福清市民政局の監督下にある民間団体・福清黄檗文化促進会を作り、その翌年には200人~1000人規模の訪日団をたびたび組織した形となる。

 言うまでもなく、中国において、宗教的な要素を持つ「民間団体」が当局に迅速に認可されることは通常ほとんどない。例外は、団体の設立それ自体が、統戦工作などの当局の意向にもとづいている場合だけだ。