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ーーそれから2年、刊行ができない状況が続きましたね。

青木 この2年で「わたしたちの声を伝えてください」と話してくれた原発事故の被災者や、昔の監督官庁や専門家の方で原発の歴史を教えてくれた方、「いつ出版になるのですか」と楽しみにしてくださっていた方たちが何名も亡くなってしまっています。少しでも早く世に出さなければと思っていましたし、準備は継続して進めていました。

 すると新聞社は今年の9月28日になって「社外活動に関するガイドライン」を改定してきたのです(10月1日施行)。その改定によって「本社の報道・取材領域に関わる取材・執筆・出版等」も「職務」に含まれる、とされ、その社外活動の場合は「編集部門の確認(監修)を受ける」と書き加えられています。新聞社の「報道・取材領域」は極めて広く、世の中のことすべてが「職務」に含まれてしまう、ともとれます。また、監修を受ける、となると、この本の中身、特にさきほどお話しした安全神話に加担したマスコミの実態をそのまま書くことは難しくなるでしょう。そこを省くことは、読者や取材先への裏切り行為です。

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 そこで本書では、私がいま所属している会社の名前を経歴から外しました。今どこに所属しているか、を書かずに、個人で得た情報をもとに本を書きました。

この本の印税は「私益営利」には使わず、取材経費に充てる理由

ーー会社との詳しいやりとりは、本書の「おわりに」に詳細に記されています。なによりも帯文言に、本のタイトルよりも大きな字で「マスコミの大罪!」と書いてあることの意味が「おわりに」を読むとわかります。

福島第一原発が立地する双葉町は、そのほとんどが今も帰宅困難区域だ ©AFLO

青木 また、私益営利を目的としなければ、個人的活動について社は関知しないとのことなので、この本の印税は取材費と今後の取材活動に充てさせていただくことにしています。

ーー青木さんは、今後も原発の取材を続けていく予定ですか。

青木 はい。ライフワークですから、続けていきたいと思っています。特に、被災者の方々の声はきちんと伝えていきたいですね。今年の春の時点で、まだ原発事故による避難者が少なくとも3万人以上いらっしゃいます。たとえば講演でその話をすると「まだそんなにいるんですね」という反応をされてしまいます。SNSなどを駆使して、現状をみなさんに伝え続けなければと思っています。本書でも第1章で被災者の現状をまとめています。ぜひ手に取っていただけたら幸いです。