武蔵野線という鉄道路線がある。首都圏の郊外をぐるりと半周、府中本町~西船橋間を結んでいる路線だ。
通勤路線といえば立派な通勤路線で、ラッシュアワーにはかなりの混雑を見せる。それでいて、沿線風景は実にのどかなザ・郊外。都心に近づくにつれて混雑が増してくるような路線とは明らかに異なる性質を持っている。
長い区間に渡って乗り通す人は少なく、だいたいどこかの放射状路線から放射状路線へと乗り換える“中継ぎ役”を担うことが多いのも特徴だろう。
浦和や国分寺、松戸など、聞いたことがありそうな名のつく駅はあるものの、南浦和や武蔵浦和、西国分寺、新松戸などなど、武蔵野線が通るのは本来の町の中心とは違う場所。
そうしたこともあって、明らかに武蔵野線は首都圏の鉄道路線においては異質な存在である。もっといえば、ひとことで説明することのできない、茫洋としたイメージの路線といっていい。ならば、武蔵野線における最大のターミナルはいったいどこなのだろうか。
“明らかに異質な存在”武蔵野線で「いちばんのターミナル」はどこ?
お客の数、というところからその答えを導き出すと、終点の西船橋駅ということになる。2022年度の1日平均乗車人員は、JR東日本全体でも15位に入る約12万人だ。
ただ、これには総武線や京葉線のお客も含まれる。武蔵野線だけ、ということになると、南越谷駅が約6万8000人、北朝霞駅が約6万4000人。いずれも東武鉄道(前者はスカイツリーライン、後者は東上線)との乗り換え駅である。
つまり、南越谷・北朝霞のふたつが、武蔵野線において双璧をなす中心的ターミナル、というわけだ。このふたつの駅が、茫洋とした武蔵野線を解きほぐすカギになることは間違いない。すでに南越谷駅は歩いたことがある。なので、今回は北朝霞駅を歩こうと思う。
武蔵野線“ナゾの途中駅”「北朝霞」には何がある?
北朝霞駅は、起点の府中本町駅からは8つめの駅だ。起点寄りの手前側には新座駅。隣接する新座貨物ターミナルは紙輸送の拠点になっていて、新座駅から北朝霞駅にかけては印刷工場や出版社の倉庫などが建ち並ぶ。そして、北朝霞駅のすぐ東側では新河岸川と荒川を続けて渡ってさいたま市。北朝霞駅はそうした場所にある駅だ。