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緒方の無期懲役判決に「驚きを禁じ得なかった」…

 控訴審において、緒方弁護団は緒方のDV被害の深刻な状況を訴えるため、緒方を心理鑑定した大学教授(現・名誉教授)や、家庭内暴力の相談支援に当たっている民間団体のカウンセラーへの証人尋問を実施した。

「そうしたことに対する特段の驚きはありませんでした。なにしろ(福岡地裁判決では1名は傷害致死のため)6人が殺されてるわけですからね。死刑であることが当然だと思っていましたし、それ以外は考えられないというのが正直なところです」

 しかし、すでに触れている通り、07年9月26日に福岡高裁が言い渡した判決は、松永に死刑、緒方に無期懲役というものだった。その判決に、牧野氏は驚きを禁じ得なかったという。

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「えっ! っていう感じですよ。予想だにしなかったですね。当然一審判決通りで、(緒方の)控訴棄却って言うと思ってました」

 私自身も、この控訴審の判決公判を傍聴していたが、緒方への量刑言い渡しの瞬間、法廷内が一瞬息を呑み、やがてざわめきが起きたことは記憶に残っている。さらにいえば、緒方自身が予想外の判決に戸惑いの表情を見せ、松永は顔を紅潮させ、怒りに歪んだ表情をしていたことも。

中学生時代の松永太死刑囚(中学校卒業アルバムより)

裁判長の読み上げる判決理由に感じられた予兆

 ただし、厳しい判決が予想される“主文後回し”ではあったが、裁判長が読み上げる判決理由のなかに、いくつかの予兆がないわけではなかった。たとえば、緒方の甥である緒方佑介くん事件について触れた場面で、緒方が佑介くん殺害を思い止まるよう松永に進言したことに触れて、〈この点は、量刑上考慮すべきであると考える〉との文言を、わざわざ使っている。また、最終的な〈結論〉の部分でも、緒方は再犯の可能性が高くないうえに、〈緒方の情状は松永のそれとは格段の差がある〉と言い切っている。

「(判決理由を)聞いているうちにだんだんだんだん……、とくに後半になって、緒方にはいいような話が出てきたでしょ。おや? という感じはありますよね……」

 裁判長は緒方の情状面を重視して、死刑という判決は重すぎるとの判断を下したのだ。

「だから、それで無期なのかな、と。こちらとしては、いやいくらなんでも、これだけの人数を殺めておいてというのがあるので、即、報告を上げて、上告しましょうってなったわけです。もちろん、無期判決が破棄されて、差し戻しになるだろうということを前提とした上告でした」