今年メジャーデビュー50周年を迎えたイギリスのロックバンド・クイーンが、ボーカルにアダム・ランバートを加えて、大晦日の紅白歌合戦に登場する。

 フレディ・マーキュリーの生涯を描いた映画「ボヘミアン・ラプソディ」ではクライマックスに描かれた「ライヴ・エイド」。それは1985年、バンドが空中分解寸前の最中で行われたステージだった。『フレディ・マーキュリー解体新書』(米原範彦、平凡社新書)より抜粋して紹介する(一部改稿)。

 当時飛び交っていた「解散説」に対して、フレディの答えはーー。(全2回の2回目/前編を読む)

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2019年のアカデミー賞授賞式でパフォーマンスするブライアン・メイ(ステージ中央左)とロジャー・テイラー(奥)。メイの隣で歌っているのはアダム・ランバート。スクリーンにはフレディ・マーキュリーが映し出される  ©AFP=時事

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ロック史上最高のライヴ

 空中分解寸前の状態だったクイーンに、千載一遇のチャンスが舞い込んだ。85年7月13日の「ライヴ・エイド」である。映画「ボヘミアン・ラプソディ」でもクライマックスに配置されたライヴだ。

 アフリカ難民の救済を呼びかける84年のイギリスの「ドゥ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス?」、85年のアメリカの「ウィ・アー・ザ・ワールド」がヒット。高まる救済の機運を踏まえて、ブームタウン・ラッツのボブ・ゲルドフらが企画したチャリティ・イベントである。

 フレディの故郷、アフリカ。ミュージシャンらの囂囂(ごうごう)たる非難にさらされたライヴ出演の地、サン・シティと同じアフリカ。そんな因縁深いアフリカ救済のライヴは吉と出るか凶と出るか。結局、フレディたちはリスクをものともせずに出演した。

 クイーンのステージは、ライヴ・エイド出演者の中でも、クイーン自らのライヴの中でも群を抜いて素晴らしく、ロック史上最高のライヴとの称賛に浴した。

「ライヴ・エイド」でのクイーン。このときのパフォーマンスは「21分間の奇跡」として語り継がれている ©getty

21分間のうちに6曲を詰め込んだ

 実際、フレディの声の伸びやかさやブライアンの攻撃的なギター、ロジャー、ジョンの着実なドラムとベース。21分間のうちに6曲を詰め込み、「エーオ」も入れて7アクトで圧倒した。これほどすさまじくエネルギーが滾る「エーオ」を聴いたことがない。

「エーオ」に続く「ハマー・トゥ・フォール」の躍動感。短縮バージョンゆえか、最後のドラムとヴォーカルの破綻すれすれの掛け合いは実にスリリングだ。そして「伝説のチャンピオン」のクリアな「ハイC(上の「ド」C5)」も発していた。フレディのステージアクションのビビッドでお茶目なことといったらない。