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『TVタックル』でのバトンの奪い方

 私がMCを務めているテレビ番組『ビートたけしのTVタックル』では、出演者は基本的に喋りたい人だらけなので、むしろ「いっぺんに喋らないでください!」と注意喚起しなければならないことのほうが多くなります。でも司会の私ひとりの力ではどうにも収まらないこともあり、ゲストの方々はそれぞれに知恵を絞って自分の発言時間を作ろうとなさいます。その中に、なかなか自分の番が回ってこないとわかると、今、喋っている人に向け、

「○○さん、おっしゃる通り。本当にそのご意見、ごもっとも!」

 大きな声で賛同する方がいたのです。するとそれまで発言権を独占していた人が、まあ、当時はだいたい自民党の浜田幸一さんでしたが、ふっと力を抜く。言葉を止めて、ん? 俺に賛成してくれているのか? と気をよくする。その一瞬のタイミングを逃すことなく、続いてこう切り出すのです。

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「まことにおっしゃる通りなんです。ただ、僕はちょっとだけ違う意見を持っていまして……」

 そこから一気に発言のバトンを奪ってしまいます。なんと上手な奪い方でしょう。あのときは感動しました。ハマコウさんは、まるで鳩が豆鉄砲を食らったかのような顔をしていらっしゃいましたけれど。

浜田幸一さん ©文藝春秋

ハマコウさんを遮るには

 そうは言っても、自分の話を突然、中断させられたら、誰だって愉快な気持はしないでしょう。これも『TVタックル』の番組内でのことですが、ハマコウさんがあまりにも一人で喋り続けていらっしゃると、他のゲストが口を挟めなくなってしまう。そういうとき、スタジオにいるディレクターから司会進行役の私にサインが飛んできます。

「他のゲストに発言を振って!」

 そう言われても、気持よく語り続けているハマコウさんを止めるのは難しい。でもディレクターの指示を無視するわけにもいかない。困った末、私はハマコウさんの顔をじっと見つめました。すると、いくら一気呵成に話し続けていても、ときどき息継ぎをなさることに気づいたのです。ハマコウさんが大きく息を吸い込みます。今だ! 私は勇気をふるってそのタイミングに、

「三宅(久之)さんは、どう思われますか?」

 強引に割り込みました。すると政治評論家の三宅さんが、

「そうですねえ。僕としてはねえ」

 うまくハマコウさんから三宅さんにバトンを移すことができました。

 気をよくした私は、その後、この手を何度も使いました。ハマコウさんが一人で喋り続けているなと思ったら、息継ぎのタイミングを見計らい、

「三宅さんは、どう思われますか?」

 いくら強気のハマコウさんも、同年代の三宅さんに「黙ってろ!」と怒声を飛ばすことはできません。渋々の顔で引き下がってくださいます。

 あるとき、いつものように「三宅さんは……」と口を挟んだら、ハマコウさんが私の顔を睨みつけ、おっしゃったのです。