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身元不明遺体の調査に参加するようになったきっかけ

 2009年8月、このコミュニティを発見したことがきっかけとなり、彼は法医学的な芸術分野の世界に足を踏み入れた。

「ニュースをインターネットで見ていたら、とある記事が気になったんです。それはジェイシー・リー・デュガードという名の11歳の少女の事件で、1991年にカリフォルニアの道路で誘拐され、18年間も監禁されていたというものでした。

 誰もがジェイシーは死亡したと考えていましたが、2009年に警察が誘拐犯の家で生きていたジェイシーを発見したんです。ジェイシーを誘拐したのは、フィリップ、そしてナンシー・ガリードで、2人は逮捕され、少女は母親の元に戻されました。そのときまでに、ジェイシーは29歳になっていました」

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「この事件についてインターネットで調べていて、ウェブスルースを見つけました。コミュニティのことは、それまで一度も耳にしたこともありませんでしたよ。身元不明遺体について大勢の人たちが調査に参加していました。それも、自宅から。僕はそのことにとても驚いて、『もしかして、僕もできるかも?』なんて、考えたんです」

「帳簿の管理能力」と「絵を描く能力」

 当時、カールは休職中で、カリフォルニア州エル・セグンドの家で病弱な母のシャーリー・メリルの世話をしていた。「名前のない死者の身元を割り出すという作業が、母の世話をしながら家のパソコンを利用してできるのです」と彼は説明する。

「身元不明遺体がそれだけ多く存在すること、また、そのような被害者に名前を与えることは、僕にとって価値のあることだと思えたんですよね。法医学的に描かれた身元不明者の似顔絵の一部は、僕には正確なものとは思えませんでした。というのも、僕には画家としての才能がありますから。だから、自分で似顔絵を描いてみようと思ったんです」

「母の看病をしていましたから、家に閉じこもる生活でしたが、そのおかげでコンピュータを使った作業に多くの時間を割くことができました。僕が描いた似顔絵は評判がよく、すぐに身元不明遺体の似顔絵を描き直して欲しいとの依頼が殺到しましたよ。行方不明者もね」

「2017年に母が亡くなると、僕は仕事に戻りましたが、法医学アーティストの作業はフリーの時間で続けました。目的はヴィジュアル的に魅力のある似顔絵を描くこと。人々の目を引く作品を描くこと。見た人が似顔絵を物語と結びつけ、ソーシャルメディアでシェアしたくなるような、そんな似顔絵を描くことです」

 帳簿の管理能力と絵を描く能力という、全く異なる才能がどのように結びついているのか不思議に思ったが、カールによると、この2つの才能は互いを完全に補い合うのだという。

「僕が美術の力を培ったのは若い頃でしたので、絵を描くことは今までずっと得意でした。公認会計士という仕事には、優れた分析技術が必要で、その分析の才能がデジタル復元の際に力を発揮してくれるんですよ。それに僕は表計算ソフトが大の得意。身元不明遺体や行方不明者の追跡に役立ってますよ」