アメリカには、人生をかけて未解決事件の謎を解き、時には警察よりも早く犯人にたどり着く「市民探偵」がいる。彼ら彼女らは、数千時間も費やして手がかりを探し続けることもあるという。いったいなぜ、そこまでして活動するのか?

 ここでは、実際に起きた事件とそれを解決した市民探偵たちの物語を綴った『未解決殺人クラブ  市民探偵たちの執念と正義の実録集』(大和書房)より一部を抜粋。身元不明遺体の頭蓋骨から似顔絵を描き、身元を特定する会計士のエピソードを紹介する。(全2回の2回目/1回目から続く)

写真はイメージ ©iStock.com

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遺体の分析をして似顔絵を描いていく

「カール・コップルマン(Carl Koppelman)」とGoogleの画像検索に入力すると、この会計士の手による「死者を甦らせた復顔イメージ」が何十枚も表示される。彼が復顔した多くの行方不明者の身元が判明している。

 被害者の身元が判明すると、カールが描いた似顔絵が驚異的であることがわかるようになる。警察が描く白黒の似顔絵とはまったく違い、彼の描く似顔絵は写真風で、油絵の雰囲気を持っている。とても具体的だ。

 顔には個性があり、目には魂が宿っている。輪郭、そして様々な皮膚のトーンを描写している。眉をひそめ、微笑み、顔をしかめ、驚いて眉を上げている。カールは死体解剖写真に写っている遺体の分析をして、表情を決めていく。死体は腐乱が進んでいたり、とてつもない力によって破壊されている場合も多い。

 被害者がうつ伏せで発見されている場合、例えばカリ・ジェーン・ドウ(カレドニアで銃殺された身元不明女性の呼称。アメリカの警察では身元不明遺体にジェーン、あるいはジョン・ドウという名前をつけることになっている)の場合がそうだが、顔の皮膚に血液が集まり、顔全体が赤く腫れ上がることがあるとカールは言う。頭蓋骨しか残っていないケースもあるという。

遺体の一部からその人物の色や生命力が浮き上がる

 カールはコーレル・フォト・ペイントというデジタル写真編集ソフトを使って、リタッチ、そしてフォト・ペインティングといったリアルな特殊効果を生み出し、被写体に命を与える。

「コーレル・フォト・ペイントはアドビのフォトショップに似ています。とてもハイクオリティーなグラフィックプログラムで、キャンバスに絵を描くような感覚で使っています。遺体に似ていると思うモデルを、オンライン上で探すことから作業をはじめます。

 その写真を使用して、90から95パーセント程度透過して、死者の写真に重ねてみるのです。この効果により、生きている人間が見せる構造要素がなかったとしても、遺体の一部からその人物の色や生命力が浮き上がるのです」

「被害者と同じ年齢、性別、ジェンダー、そして人種の、フォトスタジオ専属モデルの写真を10枚ほど選び、それを検死官が撮影した写真に重ねていきます。こうすることで、生きていた頃の死者がどのようなルックスだったのかを描写するヒントを得ることができます。

 次に別の技術を用いて皮膚と筋肉のトーンを調整して、可能な場合は当人のオリジナルの髪型を再現してみます」