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「まるで幽霊を見ているようでした」30年以上身元不明だった16歳少女の正体とは…素性をつきとめた「市民探偵」会計士の“執念”

「まるで幽霊を見ているようでした」30年以上身元不明だった16歳少女の正体とは…素性をつきとめた「市民探偵」会計士の“執念”

『未解決殺人クラブ  市民探偵たちの執念と正義の実録集』より #2

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新しい行方不明者の中からついに…

 カールはそこから4年にわたってカリ・ドウの似顔絵に小修正を加え、卒業アルバムのデータを精査して彼女の顔を探し続けた。毎日机に向かって、行方不明者のプロファイルを読み、フロリダ、南カリフォルニア、そしてアリゾナで新しい行方不明者の登録がないか調べた。モニタの前で12時間以上過ごすことも珍しくはなかった。本物のカリ・ドウの顔を見つけ、彼女の身元をはっきりとさせてあげたかったのだ。

 ネイムアスのギャラリーを見ていた2014年9月のとある水曜日の夜、カールはカリ・ドウの墓碑銘に刻まれていた文字を思い出し、そしてとある考えに行き着いた。「彼女には名前が必要だ。行方不明者として埋葬されるなんてひどすぎる」。新たなプロファイルがスクリーンに映し出された。

 すると、直後に、とてもよく知っている顔なのにもかかわらず、ネイムアスでは一度も見たことがない顔が、まるで「幽霊のように」現れたという。驚いて鼓動が早くなった。肌が温かくなり、緊張するのを感じた。「彼女かもしれない」とカールは思い、若者向け雑誌のモデルとして表紙を飾ることができそうな少女の写真を拡大してみた。彼女は美しい茶色い目をしており、少し上を向いた鼻をしていた。 

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 ふわふわの髪にはブロンドがハイライトされて、こめかみ、頰、そして顎のあたりでカールして、跳ねていた。肌は少し日焼けしていた。そして彼女の笑顔……。それは美しさを振りまくようだった。「間違いない」。

歯のかみ合わせまでぴったりでした

 写真に映った彼女は、1963年ジョージア州アトランタ生まれのタミー・ジョー・アレクサンダーだった。彼女が生前最後に暮らしていたのはフロリダ州ヘルナンド郡ブルックスビル。彼女が姿を消したのはこの場所で、1977年から1979年の間のできごとだったとネイムアスの報告書にはあった。

「ショックでしたね」と、カールは回想する。「興奮したけど、同時に悲しく感じました。タミー・ジョー・アレクサンダーがカリ・ドウだということは確信していました。僕の描いた似顔絵にとにかくそっくりでしたから。でも、僕は死人となったカリ・ドウしか知らないのです。写真のタミー・ジョーは生きていて、微笑んでいる。まるで幽霊を見ているようでしたね」

「僕はタミー・ジョーの写真を95パーセントの透過にして、カリ・ドウの検死写真に重ねました。完璧に一致しました。歯のかみ合わせまでぴったりでした」

未解決殺人クラブ~市民探偵たちの執念と正義の実録集

未解決殺人クラブ~市民探偵たちの執念と正義の実録集

ニコラ・ストウ ,村井理子

大和書房

2023年12月16日 発売

「まるで幽霊を見ているようでした」30年以上身元不明だった16歳少女の正体とは…素性をつきとめた「市民探偵」会計士の“執念”

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