大都市は、確かに便利だし何でも揃っている。だからといって、暮らしやすいとは限らない。
たとえば、東京。中心部になんでもかんでも集まりすぎている上に、あまりに規模が大きい。だから、通勤や通学に1時間以上かけている人はざらにいる。通勤通学だけならまだしも、仕事終わりや休日に街に繰り出そうとしても時間がかかる。新宿渋谷に池袋、はたまた赤坂六本木と、繁華街だって星の数。だから、東京に暮らしていると、人生の大半を移動に費やしているような気がしてしまう。
その点、理想的なのはすべてがコンパクトにまとまっている都市だ。住宅地からオフィス街がそれほど離れておらず、オフィス街の近くに繁華街もセット。もちろんそれぞれ何ら不自由を感じることのない規模感でなければならない。加えて休日のレジャースポットも遠くなく、それでいて新幹線のターミナルや空港も近い。だいたい中心部から30分圏内にぜんぶが揃っていたら、最高だなあ……。
まあ、いくら理想を垂れ流したところで、そうそう都合のいい都市なんてないだろう……と思ったら、あった。そう、みんな大好き、福岡県は福岡市である。
福岡空港から30分…“ナゾの終着駅”「姪浜」には何がある?
福岡は、コンパクトな規模感の中になんでもかんでも揃っている実に素晴らしい町だ。メシも旨いし遊ぶところも充実しているし、言うことなしだ。そして何より福岡という町を理想の形に仕上げているのは、交通の利便性にあるといっていい。
福岡空港は中心部から5~10分程度。新幹線の博多駅と福岡空港は、たったの5分ほどでアクセスできる。そんな便利な空港も新幹線駅も、日本中どこを探したってないではないか。
おかげさまで、出張や旅行などで福岡空港に降り立った人は、到着ゲートを出てから多めに見積もっても30分後には市内の目的地に着くことができる。
これを実現しているのは、空港が中心部のすぐ近くにあるからというだけではない。空港と博多駅、そして繁華街の天神などをすべて結んでいる福岡市地下鉄空港線のおかげだ。
1981年に最初の区間が開業した時点では、郊外の室見駅から中心部の天神駅までしか通っていなかったが、1983年には博多駅、そして1993年には福岡空港駅まで延伸した。いまや、理想のコンパクトタウン・福岡市において欠くことのできない大動脈である。
福岡空港から地下鉄に乗り「姪浜」を目指す
そういうわけで、福岡空港から地下鉄に乗った。地下鉄の行き先は、大きく分けてふたつある。ひとつは、筑前前原駅だ。地下鉄空港線はJR九州の筑肥線に直通していて、筑前前原駅はその筑肥線の駅。イチゴの「あまおう」の産地のひとつで、魏志倭人伝に出てくる「伊都国」だったとされている糸島市の玄関口だ。
そしてもうひとつの地下鉄の行き先が、姪浜駅という。地下鉄からJR筑肥線へと変わる境界の駅だ。読み方は、「めいのはま」。だいたい2本に1本が姪浜行きだから、福岡空港をよく利用する人ならば、この行き先は必ず見かけたことがあるはずだ。