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 理由は若者たちが民進党にも国民党にも飽き飽きしていること、それ自体ではない。民衆党の内実の空虚さを、私がこの取材の時点ですでに察していたためだ。

高齢者でもエリートでもない人はどうするか

 私は前回の原稿で、目下の選挙を戦う台湾の与党の民進党と、最大野党の国民党の集会の雑感を伝えつつ、二大政党の概要を噛み砕いて紹介した。

 “超”高齢化の国民党vsエリート民進党 ビギナーのための台湾総統選挙ルポ

 両党の特徴は記事の通りだ。民進党は台湾の意識、国民党は中華民国の枠組みを重視する。両党の最大の違いは対中関係だが、いずれの党から総統が出るにせよ「台湾独立」も「中台統一」も現実的には選択できないとも書いた。

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 だが、ここで出てくるのが、高齢者でもエリートでもない人はどこを選べばいいのかという問題である。加えて言えば、二大政党のどちらが勝っても大枠では現状維持なのに、国家のあり方みたいな主語の大きな争点で騒ぐことに飽きた人はどうすればいいのか。近年の台湾では、そうした人も増えている。 

 これは従来の台湾のイメージからは想像しづらいかもしれない。ただ、民主化以降に成人した30代以下の台湾人にとって、国民党はもちろん民進党も既成政党であり、はじめから「偉い人たち」だ。少子高齢化や若者の貧困化は非常に深刻なのに、二大政党は金持ちや年寄りや頭のいい人にばかり顔を向け、困っている自分たちを見てくれない(ような気がする)。

不満をすくいとる「元医師」

 結果、不満をすくいとっているのが「第三極」の民衆党だ。2019年に設立された新しい党で、医師の白衣の「白」と、同じく清潔感のある水色がイメージカラーである。具体的な政策は福祉面の重視を打ち出すいっぽう、国家観については、台湾アイデンティティを打ち出しつつも、経済浮揚をもたらす中国との交流推進も図るという玉虫色だ。