たとえば壇上の面々も、元国会議員である黄国昌はもともと若者向けの台湾独立派寄りのベンチャー政党「時代力量」の設立者(党内で内紛を起こして離党)、元台北市議の黄珊珊は2000年に国民党から分かれた勢力である親民党との二重党籍だ。
選対本部長で元台北市議の鄧家基は、国民党の外省人勢力の分派で中台統一を掲げる「新党」に長年籍を置いてきた。さらに元台北市職員の周榆修は、数年前までは与党の民進党の党員だったようだ。ほか、この前日に基隆市の選挙集会に登壇した候補者で元国会議員の許忠信は、李登輝を精神的指導者に仰ぐ古い台独派政党「台湾団結連盟」の出身である。
日本人向けにわかりやすく言えば、社民党とれいわ新選組と次世代の党、みんなの党、国民新党……あたりの左右の小政党の元議員で返り咲きの夢を捨てられない人や、柯文哲の市長時代の元部下が強引に集められた形だ。なお、これも民衆党の支持者にいわせれば「柯文哲と志を同じくした人は誰でも仲間になれる」という話になる。
「中国に関連する質問は一切NG」の候補も
党首の柯文哲は、もともと台大医院(日本でいう東大病院)に長年勤務した著名な医師で、台大医学院教授も務めるなど、医師としては立派なキャリアを持つ人物だ。仕事自体はできる人らしく、台北市長時代も一定の業績があり、民衆党はそれを強くアピールしている。
ただし、所属議員のバックグラウンドからもわかるように、民衆党の中国大陸に対する姿勢は「平和の維持」「交流の推進」を唱えつつも非常にあいまいだ。
今回、中国大陸と関係が深いと思われる別の立候補者に私が取材依頼を送ったところ、「中国に関連する質問は一切NG」という、びっくりするような返事がきたこともある。支持者の票が割れそうな話題は喋らない、という戦略なのかもしれない。
なお、今年1月上旬には民衆党の桃園地区の広報担当幹部だった馬治薇という立法院選の女性候補者(ただし無党派での立候補)が、中国共産党のインテリジェンス機関から合計1400万円相当の金銭を仮想通貨などで受け取った容疑で、台湾当局に拘束される事件も起きている。なんでも受け入れる「第三極」は、ワキも極めて甘い。