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 柯文哲は2014年に無所属候補として台北市長に当選した際には民進党の支援を受けたが、2010年代後半からは既成政党を辛辣に批判しはじめた。舌禍も多く、2017年には過去に診察した元総統の陳水扁(退任後に汚職容疑で収監され体調を崩していた)について「最初は詐病だったがやがて本当になった」と発言、医師のコンプライアンス違反として罰金を受けている。

1月11日に台北市内で開かれた小集会に登壇した柯文哲。党のイメージカラーである白のパーカー姿 ©安田峰俊

 総統選候補者のテレビ討論会を見てみると、優等生的な民進党候補の頼清徳、警察官僚出身だけに無骨な語り口の国民党候補の侯友宜に対して、柯文哲は口語的な口調で、相手に絡むようなネチッこい喋り方が印象的だ。会話の揚げ足を取ったり、受けた質問を混ぜっ返してごまかすようなやり取りも目立つ。

「TikTokに向いている」暴言政治家

「柯文哲は政治家らしくないところがいいんです。彼は私たちの言葉で話してくれる。私たちの方を向いてくれている」

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 とは、台北の街で会った40代の女性支持者の弁だ。これは彼女に限らず、民衆党の支持者たちが異口同音に話す決まり文句でもある。既存の権威を挑発する言葉は、たしかにスカッとするはずだろう。加えて少子高齢化対策や住宅問題対策など、若者の生活上の課題を解決するような政策も売りである。

福祉を重視する柯文哲の政策。高額な出生手当て、12歳までの子ども手当、公共住宅の申請負担軽減、代理母を認めて少子化を解決……と、若い世代に響く内容は多い ©安田峰俊

 ただし、民進党と国民党の間を揺れ動くような姿勢が、主張に軸がなくポピュリズム的だと批判されることも多い。与党・民進党支持者の40代の男性は、柯文哲をこう評する。

「柯文哲は自分が言ったことを平気で翻す。話が矛盾だらけで、一貫しては聞けたものじゃないのだが……。TikTokのようなショートムービーにはすごく向いているんだ。発言を切り貼りすると、すごいことを言っているように見える」

候補者のロゴや政党イメージの垢抜けぶりは3候補のなかでもトップクラス。ちなみに柯文哲のあだ名は「柯P」で、台湾大学に勤務時代に「柯Professor」を略して使われていたもの ©安田峰俊

 今回の立法院選で民進党と国民党の議席が拮抗した場合、たとえ民進党の頼清徳が総統選に勝ったとしても、議会では三番手の民衆党がキャスティングボートを握る。同党は実際の議席数以上に台湾政治で大きな影響力を持つ可能性があり、詳しく知っておいて損はない。私はさっそく、現地で彼らを調べてみたのだが……。