昨年11月、北海道札幌市西区の道路上で、軽乗用車から外れたタイヤが4歳の女児を直撃し、意識不明の重体となる事故が起きた。事故車両にはタイヤ取りつけ部に違法改造にあたる箇所が見られ、これが脱輪の原因となった可能性が指摘されている。
改造箇所と事故との因果関係が推察されることから、この事故は「無責任な改造をするオーナー」すなわち「普通のドライバーではない者」によって引き起こされた、といった見方もある。
もちろん法の逸脱により他者に危害を加えた責任は、それ自体追及されるべきものである。ただ一方で、私たち「普通のドライバー」にとってこうした事故が無縁かと言えば、必ずしもそうとは言い切れないのではないか。
もしかするとドライバーであれば誰しも、タイヤ関連部品の整備不良によって誰かを傷つける可能性があるのかもしれない。さまざまなデータをもとに、「普通のドライバー」がタイヤに起因する事故を起こしてしまうリスクについて検証してみたい。
「タイヤ脱落」北海道だけでも月に20件近く
まず前提として、走行中のタイヤ脱落は改造車でなくとも生じる可能性がある。先の札幌市の事故を受け、北海道警察は2023年11月半ば以降に道内で生じたタイヤ脱落事故の件数を取りまとめているが、12月中には全車種で20件、乗用車に限っても13件の事故が発生しているのである。
これはあくまで警察による認知件数であり、実際にはさらに多くのタイヤ脱落が起きているものと見られる。参考として、道警がJAFの提供データをもとに公表している「令和5年中北海道での『タイヤ外れ』入電件数」を見ると、ひと月あたり平均19.5件、多い月には30件以上も脱輪による救援要請が寄せられている。
このようにタイヤの脱落そのものは、決して珍しい事態ではない。「たまたま誰も巻き込まずに済んだだけ」というケースは、かなり日常的に生じているものと思われる。
しかしこの数字を見て、「タイヤが外れたのは、自分で交換作業をした車だろう」と考える人もいるかもしれない。ところが、ディーラーや整備工場に作業を任せていたとしても、同様の事態に陥る可能性はゼロではない。