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「まず考えられるのは、ナットの締め忘れや、締めつけトルクの不足です。締めつけトルクは車種ごとに規定値があり、基本的にはトルクレンチを使って数値を合わせるのですが、店や作業者によっては十字レンチだけで済ませたり、インパクトレンチでトルクを調整しないまま済ませたりしているケースも多いですね。

 それでも、しっかり全部のナットを締めていれば外れる可能性は考えにくいですが……やはりスタッドレスへの履きかえ時期は作業依頼が殺到しますから、作業に追われて確認が疎かになるなど、ミスが起きるリスクは高まると思います。

 あと、一般の方が気にされていない点としては、ホイールの座面部分の形状です。これはナットを受ける部分ですが、大きく3つの形状があり、形の合わないナットを使うと当然うまく噛み合わず、走っているうちに緩みやすくなってしまいます。

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 とくにスタッドレスタイヤでは、社外のホイールを使っている人が多く、『座面の形状が純正ホイールと違うのに、ナットをそのまま使ってしまう』というケースもありますね。これはDIY作業にありがちなミスですが、お店であっても経験の浅いスタッフに交換作業を任せているようなところだと、そういったミスも起きやすくなるとは思います」(タイヤショップオーナーB氏)

ホイールの座面とナット形状は主に「テーパー座」「球面座」「平面座」の3つに区分される。写真はそのうち「テーパー座」のホイールとナット。ホイールに対して形の合わないナットを使うと緩みの一因になる

注意するのは「取りつけた直後」だけでなく…

 さらに、取りつけ時のミスに起因するタイヤ脱落が発生するのは「取りつけた直後」だけではない。国土交通省の資料によれば、交換作業から脱落事故が発生するまでの期間として、1ヶ月後までが約53%、以降2ヶ月後までが約24%、以降3ヶ月後までが10%と、一定の時間・距離を走行したあとに外れてしまうケースも珍しくない。

「取りつけ方に不備があると、走っているうちに徐々にナットが緩んでいきます。取りつけ直後に問題なく走れていても、100kmほど走行したら再度トルクレンチでナットを締め直しておくと安心です。

 トルクレンチを持っているドライバーはあまり多くないと思われますが、車載のレンチなどでも、緩みがないかをチェックしておくといいと思います」(同上)