「持ち主の点検不足」で起きるパンク・バースト
もちろん、タイヤ関連の事故はタイヤ脱落だけではない。車体の制御が著しく困難になるパンクやバーストも、重大事故の引き金となる可能性がある。
タイヤのパンクは、それこそ誰にでも生じうるトラブルである。JAFのロードサービス出動理由のうち、パンク・バーストは「過放電バッテリー」に次いで2番目に多く、例年40万件前後の救援が行われている。
一般に、パンクは「ネジや釘を踏む」など不可抗力によって生じるイメージが強く、ドライバーの管理責任とは無関係だと捉えられている節がある。
ところがJAFの発表を見ると、2021年10月中に起きたパンク・バーストの救援件数3万6733件のうち、ネジや釘などが原因であると明確に特定できたケースは8754件と、全体の4分の1に満たない。
異物を踏んでしまうこと以外に、パンク・バーストの理由として考えられるのは主に「空気圧不足」や「タイヤの劣化」である。異物を踏むのは偶発的な事故だが、空気圧不足や劣化は持ち主が事前に対策しうる問題だと言える。
乗用車の3分の1が“空気圧不足”のまま走行
タイヤの空気圧に対するドライバーたちの意識について、都内のガソリンスタンドでマネージャーを務める男性は次のように語る。
「正直お客さんのタイヤを見て、『この状態で走っちゃうのか』と思うことは少なくないですよ。とくに、目視でも空気圧不足が明らかな車は週に何台か目にします。
もちろん空気圧チェックを呼びかけるんですけど、スタンドでの点検に警戒感を抱いている人もかなりいるので、『無料ですから』と促してもしょっちゅう断られますね」(ガソリンスタンドマネージャーC氏)
実際に、日本自動車タイヤ協会(JATMA)は高速SAなどで定期的にタイヤの点検調査を実施しているが、2023年に行った全27回の調査を通じて、乗用車のおよそ3分の1(33.6%)が規定の空気圧に達していなかったとの結果が報告されている。
JATMAによれば、タイヤの空気圧は1ヶ月に5%ほど低下していく。バーストの危険性はもちろん、燃費や操作性の面でも悪影響を及ぼすため、月に1度ほど、ガソリンスタンドなどでの点検を習慣づけておきたい。