ガザは漁業が基幹産業です。
沖合のガザの領海内で天然ガス田も発見されています。オスロ合意で認められたガザの領海は20海里ですが、イスラエルはその天然ガス田を自分のものとしたいがために、6海里ぐらいの地点にイスラエルの哨戒艇(しょうかいてい)が出動していて、出漁する漁師たちを銃撃したり、裸にして海に投げ入れたり、彼らの生計の糧である漁船を没収したり、イスラエルの刑務所に連行したりということをする。そのため漁師たちは沖合に漁に出ることができず、近海で小魚まで獲り尽くしてしまって、近海にも魚がいません。なので、ガザの漁師はほとんどが失業しています。海があるのに魚が獲れない、食べられないという状況です。
ガザの農産物も、どれだけ一所懸命作っても、ガザの外に出荷することができません。
完全封鎖されたガザは「世界最大の野外監獄」と言われます。完全封鎖というのは、単に物が入ってこなくて物不足になるとかいう、そんなレベルの話ではありません。占領者が自らの都合のいいように、なんでも自分の意のままに決めているということです。
230万の人間が、占領者に服従しなければならない。そういう状況に生まれてからずっと置かれている。今、この講演会場には大学生の方々がたくさんおられますが、ガザの同じ年代の若者たちは物心ついてから、ずっとガザに閉じ込められているんです。それを世界はこの16年見捨てているわけです。この世界最大の野外監獄の中で、パレスチナ人が「生き地獄」と言われるような状況の中で苦しんでいても、世界は痛くも痒くもない。ずっと放置している。何か凄まじい攻撃が起きた時だけ話題にして、停戦したら、もう忘れる。その繰り返しです。そこでイスラエルによる戦争犯罪が行われても、問題にしない。
2008~09年に起きた最初のガザに対するイスラエルの攻撃の後、国連が調査団を派遣して、南アフリカのリチャード・ゴールドストーンというユダヤ系の弁護士が代表になって非常に公正な調査をしました。この時の調査結果は、「双方に戦争犯罪は認められるけれども、イスラエルの方が圧倒的である」というものでした。
その戦争犯罪はどのように裁かれたのでしょうか。まったく裁かれていません。その後の攻撃に至っては、調査すらされていません。ガザのパレスチナ人はこのような状況にずっと置かれています。生殺与奪の権利を占領者が握っていて、数年おきに大規模な攻撃があり、今の攻撃を生き延びても、次の攻撃で殺されるかもしれない。何のために生きているのでしょうか。