日本の報道では、今回の奇襲攻撃において、パレスチナの戦士たちがガザ周辺のイスラエルの軍事基地を攻撃し、その兵士らを捕虜にして、短時間ではあれ、それらの基地を占拠したことにはほとんど触れられていません。民間人に対する攻撃とガザへの連行のみが強調されることで、「ハマースが、占領という不正から民族を解放するための運動組織である」という事実は消し去られ、単なるテロ集団に歪曲されています。さらにイスラエルは、ハマースをIS(イスラム国)になぞらえることで、彼らの奇襲攻撃に何の大義もないかのように、そして、自分たちの攻撃をテロに対する自衛の戦いのように見せかけています。すべては、問題の根源を覆い隠すためです。
明らかになってきた事実
アメリカのユダヤ系ジャーナリストが立ち上げた、「モンドワイス(Mondoweiss)」というパレスチナに関する情報サイトで、今日(2023年10月23日)、こんな記事がトップニュースになっていました。今回のイスラエル側の死者は、一体どういう人たちが、誰によって、どのように殺されたのかを分析した記事です。
「10月7日の攻撃でのイスラエルの民間人・軍人の死について、イスラエル軍に責任があるとする報告が増加」(A growing number of reports indicate Israeli forces resuponsible for Israeli civilian and military deaths following October 7 attack)と題されたその記事によると、イスラエルは「ハマースが民間人を殺害した」と言っていたが、そうではないとする情報がどんどん出てきていると言います。
記事の筆者は「匿名の寄稿者」(Anonymous Contributor)となっています。記事の冒頭に「イスラエル内で、批判的な声に対するファシズム的な迫害が激化しているため、この記事の筆者は身の危険を感じ、氏名を公表しないよう編集部に依頼があった」と編集部による注が付されています。この記事を書いたのはイスラエル内部の人で、イスラエル政府や軍を批判することで迫害されるのを恐れて、匿名になっているのです。
詳しいことはこの記事をお読みいただきたいのですが、簡単に言えば「ハマースが占拠したイスラエルの基地に対して、イスラエル軍の司令官自身が空爆を指示した。まだパレスチナの戦闘員が占拠してイスラエル兵を捕虜にとっている、あるいは交戦中の基地にイスラエル軍、治安部隊がやってきて、イスラエル軍が爆撃した可能性がある」ということです。
つまりイスラエル軍は軍事基地のパレスチナ人戦士を殲滅するために空爆し、自国兵士であるイスラエル兵もろとも殺害したという可能性があるということです。数日前には、イスラエルの国営ラジオ放送のインタビューで、キブツで一旦は人質になりながら解放されたユダヤ人女性の証言が放送されました。自分たちを人質にとったパレスチナの戦闘員たちは人道的に扱ってくれたと彼女は語っています。頻繁に水もくれて、室内は暑いからと外に涼みにも出してくれたと。