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10月7日の攻撃が意味するもの

 10月7日、ハマース主導によるガザのパレスチナ人戦士たちは、彼らを16年以上も国際法に違反して閉じ込めていたガザを囲むフェンスを突き破って、あるいはパラグライダーで、あるいはモーターボートで、越境攻撃を行いました。それは、占領下に置かれた者たちの、占領者と占領軍に対する抵抗の反撃です。

 日本のメディアではほとんど報道されていませんが、まず、彼らはガザの周辺にある12のイスラエルの軍事基地(編注:編注:以下参照 Ilan Pappe, "My Israeli Friends: This is Why I Support Palestinians – ILAN PAPPE」")を占拠しました。そこにいたイスラエル兵を捕虜にして、その後、イスラエル軍との交戦になり、基地にいた戦闘員たちは全員殺されたのだと思います。このことにはほとんど触れられず、キブツと野外音楽祭が襲撃され、そこで民間人が殺されたことばかりが強調されて、報道されているように思います。

 占領下にある者たちが、占領からの解放のために、占領軍に対して武力を用いて抵抗することは、国際法上、正当な抵抗権の行使です。しかし、この時には守るべきルールがあります。民間人に対する攻撃や、民間人を人質に取ることは、国際人道法違反であり、戦争犯罪です。占領からの解放を目指す武装抵抗が正当なものであるとしても、戦争犯罪にあたるこうした行為は許されるべきものではありません。国際法に則って、戦争犯罪としてきちんと裁かれるべきことです。だからといって、占領下のパレスチナ人が、イスラエルによる占領からの解放を求めて戦うということ、それ自体が違法化されるわけではありません。

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 間違った戦術を取ったことによって、解放を求める彼らの戦い、その要求自体が全否定されるものではないと思います。目的が正しいからといって、そこで取られる手段のすべてが正当化されるわけではありません。逆に、手段を誤ったからといって、そもそも正しいとされている目的が全否定されるわけでもありません。

 10月10日に、コロンビア大学の歴史学の授業で、パレスチナ系アメリカ人であるラシード・ハーリディ教授によるオンライン講演会がありました。そこでハーリディ教授は、まず歴史学者として、アルジェリアやアイルランド、ベトナムなどの例を挙げ、これまでの様々な民族解放闘争において、解放闘争をする側もテロを行うことがあったということを、歴史的な事実として指摘しています。

 フランスの植民地支配からの解放を目指したアルジェリアの民族解放戦線(FLN)も、植民者を集団虐殺しています。映画『アルジェの戦い』で描かれているように、アルジェのカフェで爆弾テロも行っています。しかし、だからといってフランスによるアルジェリアの植民地支配が正当化されるわけではありませんし、民族の解放を目指してアルジェリアの人々が闘うことが間違っている、ということにもなりません。ハマース主導の奇襲攻撃による民間人に対する攻撃と拉致が戦争犯罪であるとしても、その一事をもって、イスラエルによる占領という犯罪の継続や、それを維持するために占領下の人々を無差別に爆撃するというようなことが正当化されるわけではありません。