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 彼女とともに人質になっていた者たちは一人を除いてみんな殺されたのですが、殺したのは到着したイスラエルの治安部隊だったと彼女は証言しています。外で涼んでいたイスラエル人の人質たちはパレスチナ人戦闘員たちもろとも殺されたと。彼女は、一人のパレスチナ人の戦士が投降すると決めて、彼女を人間の盾にしたことで家を出ることができました。しかし、イスラエルの治安部隊は中にまだ人質が残っているその家を砲撃して、こっぱ微塵にしました。

 パレスチナ側の攻撃で殺された民間人がいなかったわけではありません(AP通信のファクトチェックでは、3件の民間人殺害が確認されています)。しかし、それは、イスラエル軍、あるいはイスラエル政府が発表しているような内容とは、だいぶ違うのではないかという情報が出てきています(筆者注1)

 今回の奇襲攻撃におけるいくつかの行動が国際人道法違反で戦争犯罪を構成するものであることは確かです。ここでご紹介したいのは、ガッサーン・カナファーニーという作家の言葉です。彼は1936年、パレスチナのアッカーに生まれ、12歳の時にイスラエル建国によって難民となり、のちにジャーナリスト・作家となって、1972年、36歳でイスラエルの諜報機関に爆殺、暗殺されました。

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 カナファーニーは、遺作となった『ハイファに戻って』という中編小説の中でこのように書いています。

『ハイファに戻って/太陽の男たち』ガッサーン・カナファーニー著、黒田寿郎・奴田原睦明訳、2017、河出書房

 

 きみたちはいつになったら、他者の弱さや過ちを、自らの特権を裏書きするものと見なすことをやめるのだろうか。(……)私たちがずっと過ちを犯し続けるとでもきみは思うのか? ある日、私たちが過ちを犯すのをやめたら、きみたちに何が残るのだ?(著者訳『季刊 前夜』12号)

 イスラエル側は、パレスチナ人が犯した過ち、それだけを口実にして、自分たちの犯罪行為をずっと正当化してきました。

 たしかに私たちは過ちを犯した。それは認めよう。では、私たちが過ちを正したなら、あなたたちにはいったい何が残るのか――カナファーニーはイスラエルにそう問うています。まるで、今日の事態を預言していたかのような言葉です。

筆者注1 現段階(2024年2月11日)までに、10月7日の「ハマスによる残忍な行為」としてイスラエル政府が世界に喧伝したこと(赤ん坊の斬首、焼き殺したこと、音楽祭での大量レイプ……)は、ZAKAという遺体回収ボランティア団体のメンバーが広めた偽証であることを、パレスチナのジャーナリストたちは伝えていましたが、イスラエルのハアレツ紙もそれを報じました。
https://www.palestinechronicle.com/zakas-world-how-an-israeli-organization-used-october-7-to-tell-lies-and-make-money/