駅舎から駅前広場に出ても、その茫洋とした広さばかりが目立ち、華やかな繁華街などは見当たらない。平日の昼下がりという時間帯がわざわいしたのだろうか。電車が到着してしばらくは四日市駅で降り立ったお客の姿があったが、ものの5分もすれば広々とした駅前広場には誰もいなくなった。
そこにはのんびりと客を待っているタクシーがいるだけだ。あまりに広いロータリーだから、ひとけのなさに寂しさを感じるくらいだ。そういえば、この四日市という駅の前、駅ビルどころかコンビニひとつないのである。
海沿いに広がる工業地帯を目指して駅の東側に出る
どうせ四日市にやってきたのなら、まずは工業地帯を歩きたいところだ。地図を見ると、四日市の工業地帯は駅の東側、つまり海沿いに面して広がっているようだ。なので、駅前広場から少し歩いて踏切を渡って駅の東側に出る。
すると、すぐに見えてきた大通りには大きなトラックがバンバンと走っている。運河が幾本も走っていて、このあたりもいかにも工業地帯。
工場群の中には港まで続く貨物列車の線路も走っていて、運河を渡るところには可動橋が設けられている。鉄道可動橋は日本でここだけで、1931年に完成した国の重要文化財なのだとか。
いずれにしても、四日市駅とその東側の工業地帯は、実に筋肉質な町だ。コンビニひとつない殺伐とした駅前風景、武骨でいて必要充分な簡素なつくりの四日市駅、そしてその向こう側に見える煙突たち。ストイックなまでに工業地帯であることに徹しているといっていい。
ちなみに、四日市の海沿いの工業地帯は駅のすぐ東側で留まるような狭い範囲ではなく、北から南までかなり広範囲にわたって広がっている。というよりは、四日市駅東側はごく一部で、たとえば南側の塩浜地区や、北側の霞ヶ浦地区といった埋立地が四日市コンビナートの中核を担っている。そうした一帯からすれば、駅東側はまだまだ序の口といったところだろうか。