やはり、大変素晴らしいではないか。この開発部長とは昔からの付き合いだが、頭の回転が速く、本当に尊敬できる素晴らしい人だ。技術開発だけじゃなく、マネジメントの才までお持ちとは。今からスイーツ・パーティの準備を始めなければ。しかし、悲報は突然に訪れる。
4人中2人が、立て続けに辞表を提出したのだ。しかも、うち1名は退職代行サービスを使って。彼女たちとは、十分にコミュニケーションを取ってきたとのことだった。このプログラムは、本人たちも納得してのものだったはずだと。
「意識の高い人たち」のためのものになっていた
唯一、難色を示したのが、最長12カ月におよぶジョブ・ローテーションだった。
実際のところ、難色を示したといっても、簡単な質問が返ってきただけのようだが、そのときも、①あくまでも研修という名目で、頻繁に開発部にも出入りできるようにする、②研修の終了後は必ず開発部に戻す、といった点について、丁寧に説明したという。開発部長は本当にショックを受けていた。というより、混乱していたように思う。「どこで間違えたのか、全くわからない」といった言葉が鮮明に印象に残った。
実を言うと、僕は話の途中から1つだけ引っかかっていた。何度でも言うが、立ち上げられたプログラムは本当に魅力的だ。これを経験することで、きっと社内でも中心的な人材となれるだろう。女性の活躍という視点からも、新たなリーダーとして、素晴らしいロールモデルとなったかもしれない。
開発部長は本当に優秀な人で、責任感も強い。僕が知り合ったころから、ずっと意識高く仕事を進めてきた。彼女たちに話したことは、きっと責任をもって実行しただろう。さて、読者の皆さんは、僕の引っ掛かりがどこにあるのか、もうおわかりだろうか。それはこのプロジェクトが、意識の高い人たちによって、意識の高い人たちのために作られている、ということだ。