文春オンライン

好待遇でも相談なく消えていく…異例の出世をした若手社員が「退職代行サービス」で次々と辞めたワケ

source : 提携メディア

genre : ビジネス, 働き方

note

「退職代行サービス」を使う若者が増えている。金沢大学の金間大介教授は「いまの若者たちは、その場で不満を伝えること自体に強いストレスを感じている。感情のアップダウンをとても嫌う傾向にあるため、退職時のストレスをなくすために代行サービスを使う人が増えている」という――。(第1回)

※本稿は、金間大介『静かに退職する若者たち』(PHP)の一部を再編集したものです。

写真=iStock.com/AH86 ※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AH86

なぜ若者は相談せず突然辞めてしまうのか

去年あたりから「何も相談せずに辞めた若者」の話を頻繁に聞くようになった。実は僕が実施した「101ヒアリング(101人に対するヒアリング調査)」でも、約7割の人事担当者が「思いもよらない若手の退職」を経験していた。

ADVERTISEMENT

人事部にとっては、長い時間とコストをかけ、やっと採用した貴重な人材。管理職やメンターにしてみれば、忙しい日常業務と並行して苦労して育成したかわいい部下である。そんな若者が、挨拶もなしに辞めていく。心中を察するに余りある。

「せっかく1on1の場を設けているのに、不満があるのなら、なぜその場で言わないのか?」

問題はそこだ。1on1で決して本音を明かさないのであれば、今後も対策のしようがなくなってしまう。なぜ、若者は本音を明かすことを避けるのか。

とある大手メーカーの開発部長から聞いた話だ。紆余曲折(うよきょくせつ)はあるのかもしれないが、これまで安定した業績を刻んできた会社だ。僕が実際にそう言うと、開発部長は「いやいや、そう見えるだけでうちも色々あるんですよ。紆余曲折なんてもんじゃなくて」と笑う。謙遜はしているが、安定して見えるだけでも十分にすごい。笑いながら返せるというのも、かすかな余裕を感じ取れる。

それを裏付けるように、近年の新入社員のスペックは高い。僕が実際にそう言うと、開発部長は「いやいや、ほんとそうなんですよ。今自分が彼らと一緒に入社試験を受けたら、絶対に落ちます」と笑う。こちらも謙遜しているようにみえるが、あれは本音だった(僕のノンバーバル・コミュニケーション力が狂ってなければですが)。実際に若手社員の学歴を聞くと、ほとんどが旧帝国大学か東京工業大学の修士以上だ。

関連記事