1ページ目から読む
5/5ページ目

江戸城本丸御殿は江戸時代をとおして5回、全焼している。この回数はほかの城と比較したときに、異常なまでに多い。ほかに西の丸御殿、二の丸御殿も4~5回ずつ全焼している。

その一例だが、文久3年(1863)に本丸御殿と二の丸御殿が全焼したときは、大奥御客御供溜から出火している。また、慶応3年(1867)に再建されたばかりの二の丸御殿が焼失したときも、大奥の長局の辺りで出火している。むろん、昔から放火が疑われている。

確認のしようはないが、狭い空間に閉じこめられた奥女中たちの鬱積した不満が、放火につながった可能性は否定しきれない。

香原 斗志(かはら・とし)
歴史評論家、音楽評論家
神奈川県出身。早稲田大学教育学部社会科地理歴史専修卒業。日本中世史、近世史が中心だが守備範囲は広い。著書に 『カラー版 東京で見つける江戸』(平凡社新書)。ヨーロッパの音楽、美術、建築にも精通し、オペラをはじめとするクラシック音楽の評論活動も行っている。関連する著書に『イタリア・オペラを疑え!』、『魅惑のオペラ歌手50 歌声のカタログ』(ともにアルテスパブリッシング)など。