それが無ければ、おそらく自分は起業もしなかったでしょうし、苦労を乗り越えながらも今の形に辿り着くことは決してなかったと思っています。
さて、そんな『ドラゴンボール』という作品を構成する、漫画というメディアの特質について解説します。
「文章を読まずに見てわかる」のはなぜか
『ドラゴンボール』といえば、漫画いっぱいに表現された文字が印象的です。
「ドカァーン!」「ズズズ」「ゴオオオ」
ここで使われている、漫画ならではの表現は、いわゆる「オノマトペ」と言われるものです。
複数のコマやページにまたがることもあり、主にカタカナで「ドーン!」などの爆発音や、雨が降っているシーンでの「ザー!」「シトシト」など、様々な表現があり、書体も多彩です。
漫画好きにはお馴染みですよね。
文字をビジュアル的に表現することで、「文章を読まずとも、見てわかる」という、右脳に訴えかけた、効率的な表現が可能になるのです。
これにより、右脳に伝わった「ドカァーン!」「ズズズ」「ゴオオオ」という視覚情報が、「体感として」長い爆発時間の疑似体験となり、その情景が読者に一瞬で伝わるわけです。
漫画はひらめきや想像力を育んでくれる
この漫画の表現技法を、筆者は「体感時間を切り出す」と説明しています。
では、どうして一瞬で、長い体感時間を伝えられるのか。これは人間の大脳の認知構造に起因しています。
委細は省略しますが、人間の脳は「脳内に溜(た)め込まれた膨大なデータから、それに近いものをパッと引き出す」という認知の仕方をしているため、画像やオノマトペで「記憶にある大爆発のシーン」を想起させられれば、それだけでその状況を一瞬で体感させられるわけです。
漫画は、左脳と右脳の可能性を最大限に活用した、人間の能力を大きく解放するメディアであり、漫画を読むことで、ひらめきや創造力が育まれていくと言っても過言ではないと筆者は考えています。