石井 そうですね。受験戦争というか、受験の仕組みというのが何かおかしいんじゃないかなというのがあった。
ただ、自分としては娯楽映画しか知らないから娯楽映画にしたい。当時見ていた深作欣二さんの映画とか、サム・ペキンパー監督の映画とか、不条理な人間性や社会への怒りを映画にするという時代でしたし。
高校や予備校の仲間、先輩たちが映画に出演
――日芸の実習で8ミリを回したのが最初で、『高校大パニック』はその後すぐですか?
石井 夏休みです。帰省して、撮影場所は福岡のまさに自分が勉強していた母校です。
――そういう意味ではドキュメンタリーに近いですね。
石井 そこに高校時代の仲間に来てもらいました。北九州から大屋君の予備校の仲間も来て、高校の先輩たちにも出てもらった。
大屋君の中学時代の友人が主役をやってくれたんですけど、彼がテアトル博多という福岡の地元の劇団に所属していたので、テアトル博多の方たちに刑事や警官もやっていただきました。
日芸文化祭の上映で初めて得た手ごたえ
――あの主役の方、すごいテンション上げた熱い演技でしたね。8ミリの自主映画であの時代いろいろ見ましたけど、あそこまで芝居をちゃんとやらせた監督ってあまりいなかったなと、改めて見て思いました。
石井 テアトル博多に入っていたということもあったと思いますけど、やっぱりその怒りが本物だと思うんです。
――共有できたんですね。
石井 私も。主人公の怒りはおそらく自分の怒りでもある。その思いだけで作っていますから。ああいうことが現実にあれば、それは大事件で重大犯罪ですけれど、自分の中にそういうものすごい怒りがあるのも本当だった。
昔からとにかく表現したいという気持ちはものすごく強かった。福岡なので音楽が盛んでバンドもやろうとしましたし、自分でも安いギターを買って毎日のように練習していましたけど、全くうまくいかない。
小説みたいなものを書いてみたり、漫画を描いてみたりとか、絵も描いてみたりとかしたけど、全く自分は才能がないというか、何をやっても駄目だというコンプレックスの塊だった。そういうエネルギーも入っていると思います。