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 これはもう駄目なんじゃないかということは何度も経験しているけど、そこからが本当の創作の勝負と知りました。最後に苦しんで苦しんで何か考え付いたアイデアとかが、その作品に輝きを与えるという経験を何回もしてきています。

ピンチになってもあきらめちゃいけない

――その苦しみがかえって作品にプラスになることもあるんですね。

石井 ピンチはチャンスという。例えば、どうしてもここは晴れてくれないと困るというシーンで大雨が降って、でも、絶対撮らなきゃいけない時がある。プロになってから特にそうですけど。

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 で、何とか「じゃあこうしたらどうだ」と撮ったシーンが良かったりするんですよね。えも言えぬ味、力がある独自の表現になっているというか。

――ピンチを生かして、また別の面白さが出ているんですね。

石井 そうなんです。だからあきらめちゃいけないということだと思うんです。『サンダーロード』も『爆裂都市』も何度も途中で終わってもおかしくない映画だったけど、やり切ったということで次がある。

いろんな方のお力で東映が配給することに

――卒制が商業映画として公開されたって、僕ら自主映画をやっていた人間から見ると大事件でした。8ミリの自主映画と商業映画が一気に近づいて見えたというか。石井さんは前例のないことをやられたと思うんです。

石井 前例がないことをやろうという狙いではなく、ただ自分がその時にとても重要だと信じる題材で、実現できる最大限に面白い映画を創り上げて、可能性を広げたい、若い観客たちを刺激したいという願いはありました。

『狂い咲きサンダーロード』 販売トランスフォーマー

――そうですか。

石井 最初から8ミリだったら8ミリでしか、自分たちにしかできない作品を撮って、それで入場料をいただいて、映画館でたくさんの人たちに見せるんだということの延長でしかないです。ものすごく運がよかったと思いますけど。

 いろんな方のお力で結果的に東映が配給することになった。東映セントラルの配給で最初は5館でしたけど。その後に100館ぐらい、全国公開になった。

――それは本当に事件ですよね。

 
※注 小林支配人 上板東映の支配人・小林紘。自主映画を上映して支援するだけでなく、『狂い咲きサンダーロード』『爆裂都市 BURST CITY 』『四月怪談』では製作として参加。2008年没。