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両親は、いじめを学校の責任にした。そして、学校側を責め立てた。しかし、私立中学は生徒の親の授業料で成り立っていることもあり、いじめの対応には弱腰だった。「いやなら、いつでも辞めてもらって結構」というわけだ。

結局、私は、私立中学を一年の終わりで退学した。

いざ退学してしまうと、学校とのつながりもプツリと切れてしまった。あの想像を絶するようないじめは確かになくなったが、それは学校という社会とのつながりを失うことでもあった。

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だからといって今さら地元の中学に戻るわけにもいかない。あそこには、かつてのいじめっ子たちがいるからだ。義務教育なので籍だけは地元の中学に置くことになったが、私の足はどこにも向かなくなっていた。

母は、そんな私にしびれを切らしていた。

「なんであんたは、どこに行ってもいじめられるのよ!」
「わからない! わからない!」

私は、泣きじゃくった。本当に、わからなかったからだ。なぜ、自分だけがこんな目に遭うのか。どの学校に行っても、うまくいかないのか。いつもいじめの標的にされてしまうのか。なぜ? なぜ? 私自身が一番その答えを知りたかった。

引きこもりの苦しみ

私はそのままズルズルと、不登校生活へと突入していった。それは本格的な引きこもりのはじまりを意味した。もっとも多感な時期の引きこもりは、私の人生において大きなトラウマとなった。

家から出られない生活は、心身ともにこたえる。

引きこもりは、苦しい。とにかく苦しいのだ。

自分だけが社会や学校から取り残されていると感じる。そして日々、自分がどうしようもないダメ人間に思えてきて、焦燥感が襲ってくる。自分はこの世界には存在してはいけない人間なのではないかと思えてくる。

私は、真昼間に母の車でたまに出かけた。助手席に座った私はシートベルトを外し、必死に小さく体を丸めて姿を隠した。引きこもりは、やっぱり恥ずべき存在なのだ。それは、骨の髄まで母が私に植えつけた「恥」の感覚だったと思う。