明石という町の存在に初めて触れたのは、小学生の頃だっただろうか。たしか、教科書か何かで東経135度、すなわちわが国の標準時子午線が通っているのが明石の町だ、というような感じで習った記憶がある。
そのときはそれ以上でもそれ以下でもなかったと思うが、おかげで明石という町は、旅行で訪れた観光都市や都道府県庁所在地などと同じくらいの存在感を持って記憶に定着していた。
しかし、かといってそれ以来まともに明石の町を訪れたことがあるわけでもないし、標準時子午線が通る町というところから情報のアップデートがされたわけでもない。せいぜい明石海峡大橋、または神戸のお隣のベッドタウンなのだろう、といったところ。
最近では、泉房穂前市長がメディアを賑わしているなあ、くらいなものだ。あとは、「明石焼き」の名でも知られるタコ焼きの一種(ルーツとも言われる)、玉子焼きが名物で、たいそうおいしいということくらいか。いずれにしても、より明瞭で具体的な明石の町のイメージは、持ち合わせていなかった。
それでも、明石市の人口は約30万人。兵庫県では第5の都市で、それなりに重要な都市であろうことは疑う余地はない。何より、天下の新幹線だって明石市内に「西明石」という駅を持つ。新幹線の駅の有無は、その都市の存在感の大きさを示す指標のひとつといっていい。
そういうわけで、一度くらいはというつもりで明石の町のターミナル・明石駅にやってきた。
西明石駅からは在来線に乗り換えてひとつ東側。また、新大阪駅からは新快速に乗って約45分ほど。西明石駅はほぼ「のぞみ」が停まらないので、東京から訪れようとするならば新大阪駅で新快速に乗り継ぐのが明石駅への現実的なアクセス手段なのだろう。
ホームに降り立つ。まず目に入ってくるのは…
明石駅は、実に立派な高架の駅だ。JR線ではJR神戸線(山陽本線)しか乗り入れていないが、すぐ南側には私鉄の山陽電鉄の高架ホームも仲良く並ぶ。山陽電鉄は阪神電車との直通運転を行っており、大阪梅田駅からの直通列車もある。ただ、停車駅の数が違うから、新快速と比べればだいぶ時間がかかってしまう。
そんな明石駅の高架ホームに降り立つと……まず目に入ってくるのは、お城であった。