1ページ目から読む
2/5ページ目

 この地域のお城と言えば、国宝の白鷺城、姫路城だろう。姫路城も姫路の駅のホームからよく見える。まっすぐ道を行った先に、白く輝く白鷺城。ああ、姫路に来たなあ、と思わせる、実によくできたしかけといっていい。それと同じようなしかけが、明石駅にもあるというわけだ。

 

 ただし、姫路と違うのはお城との距離感だ。姫路城は姫路駅からだいぶ離れているが、明石の場合はほんとうにすぐ目の前にお城がある。ちなみに、姫路城には天守閣が残っているが、明石城には天守はない。

そのお城側に出てみよう

 目の前にお城があると、どうしてもそちらに引き寄せられる。高架下の改札を抜け、すぐ北側に出る。目の前にはお城のお堀が水を湛えていて、その向こうに石垣が見える。かつては明石城、いまは明石公園として整備されているようだ。お堀沿いを少し西に歩いたところに、城跡の公園への入り口があった。もともとは、太鼓門といったらしい。

ADVERTISEMENT

 この門の脇には、何やら立派な像が建っていた。明石城主のお殿様か何かか、と思って近づくと、「中部幾次郎翁」とある。

 説明書きによると、中部さんは明石で鮮魚の運搬や仲卸を行う家に生まれ、後年下関に拠点を移して大洋漁業、現在のマルハニチロの祖である林兼商店を創業した人物。郷土の偉人として、まだ中部さんが健在だった1928年に建てられ、金属供出でいったん失われるも戦後再建されたのだという。

 

 中部幾次郎さんに見守られながらお城の中に入る。いまでは公園になっている明石城の跡は、石垣や矢倉など、天守台跡などが残っているほか、野球場や陸上競技場なども設けられている。

 中でも野球場は1932年にできたという伝統のある球場だ。かつてはジャイアンツや中部さんが創業した大洋漁業が保有していた大洋ホエールズなどが春季キャンプを張ったこともあるという。