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「今の政治家に、これほど国のことを考えている人がいるのか」世界的ダンサーの田中泯が語った、日本や社会への“強い怒り”とは

田中泯(ダンサー)――クローズアップ

source : 週刊文春 2024年5月2日・9日号

genre : エンタメ, 芸能, テレビ・ラジオ

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「私と大神龍太郎は、共通する強い感情を持っています。それは、こんな愚かなことを続けていて、日本は、人間は、どうなってしまうんだという社会への不満であり、怒りです。私は、子どもの頃から、ずっとこの怒りを抱えて生きてきました。そして踊ってきました。だから、選んだ生き方はずいぶん違っていますが、もしかしたら、私も龍太郎のようになっていたかもしれないと、ふと思うんです」

世界的なダンサーであり、近年は名バイプレイヤーとして数々の映像作品に出演している田中泯さん。このたび、初めて“主演”という立場で参加するのが、ディズニープラス「スター」のオリジナルドラマ『フクロウと呼ばれた男』だ。

田中泯さん

 田中さん演じる大神龍太郎は、時の総理大臣(原田美枝子)までもが一目置く存在で、その正体は国家の存亡をも裏で操るフィクサー、通称「フクロウ」。物語は、次期総理候補である与党幹事長(中村雅俊)の息子が謎の死を遂げたことから始まる。密かに依頼を受けたフクロウは、死者にまつわる「世の中が知る必要のない事実」を巧みに闇に葬り去った。これまでずっとそうしてきたように、この国を守るために――。

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「龍太郎のやり方はダーティーだけど、彼なりの正義感や国を思う心があることは間違いない。でも今の政治家に、これほど国のことを考えている人がいるのかといえば……複雑な気持ちになりますね」

 硬派なポリティカル・サスペンスである一方、本作には、家族ドラマ、群像劇としての側面も。頼りない長男(安藤政信)、そつのない長女(長谷川京子)、歌手を夢見る次女(中田青渚)、そしてアメリカ留学から帰ってきたばかりの次男・龍(新田真剣佑)。彼らのことばかりは、龍太郎とても思い通りにはできなかった。やがて、そんな弱点を見抜き、龍太郎を破滅させるべく家族に近づこうとする存在が現れる。フクロウは、愛する家族と国を守ることができるのか。

©2024 Disney

「父に反発する龍の感覚も真っ当で、青年らしいまっすぐな正義感の持ち主です。私はそこにも共感する。だからこそ、この二人は親子なのだとすんなりと思えました」

 ところで、初めての主演の感想を聞くと、「主役って、こんなに話を聞いてもらえるんだ、と思いました(笑)」と田中さん。これまでにも、現場で意見を求められたりすることはあったが、いずれも今回の比ではなかったという。

「やはりその分、力が入りましたね。ただ、私にとってはどのシーンでも基本は同じです。いつも全力でやるだけ。踊りと同じです。役であっても、生きるということは、全力の瞬間の積み重ねだと思うので」

たなかみん/1945年東京都生まれ。66年クラシックバレエ、モダンダンスを10年間学び、74年独自のスタイルでのダンスを展開、世界的なダンサーとして活躍中。俳優としては、2002年『たそがれ清兵衛』で初出演し、日本アカデミー賞最優秀助演男優賞・新人俳優賞を受賞。以来、唯一無二の存在感で国内外を問わず多くの映画、ドラマに出演している。

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ドラマ『フクロウと呼ばれた男』
ディズニープラス「スター」で独占配信
(全10話/現在、第5話まで配信中、5月1日に第6・7話、5月8日に第8~10話を配信)
https://disneyplus.disney.co.jp/news/2024/0405_house-of-the-owl

「今の政治家に、これほど国のことを考えている人がいるのか」世界的ダンサーの田中泯が語った、日本や社会への“強い怒り”とは

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