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島のセロリのおかげで壊血病が治り始める

 こうした対立はあったものの、島に上陸してから1週間後には、みなに新たな目的意識が生まれていた。食料を節約するため、チープは配給量を減らした。これについて、バイロンは「極めつきの節約」と評している。チープが肉を配給できる幸運な日には、通常なら1人1切れのところ、1切れを3人で分け合った。それでもみなにとっては、島で孤立して以来味わったことのない何よりの栄養源だった。「我々の胃袋は、味にうるさく繊細になった」とバルクリーは記している。チープは時折、ワインやブランデーを振る舞い、みなを元気づけることもあった。

 船匠助手のミッチェルとその一派は相変わらず反抗的ではあったが、表立って楯突くことはなかった。このミッチェルの一派とは、掌帆長のキングでさえ距離を置くようになっていた。不安からふいに怒りを爆発させることがあったチープも、以前より落ち着いた様子だった。さらに、チープたち一行は、ほどなく、予想外の恩恵を受ける。島で手に入れたセロリのおかげで、いつしか壊血病が治り始めたのだ。

 キャンベルはこう記している。それまでずっと、チープは「みなの安全に最大の気配りを見せていた」。そして「もし艦長がいなかったら、多くの者が命を落としていただろう」と付け加えている。

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水鳥を捕まえようと、即席の板船を造る者も

 バイロンによると、遭難者たちはみな、ロビンソン・クルーソーさながらに何とか知恵を絞って生き延びようとしていた。ある日、新しい栄養源を発見する。細長い海藻だ。その海藻を岩からこそぎ取った。それを2時間ほど茹でたところで、バルクリーが「おいしいし健康によい食べ物」であると判断した。

 また別の時には、バイロンと仲間たちが、その海藻に小麦粉をまぶして蝋燭の脂で揚げ、そのさくさくした食べ物を「殺戮(スロー)ケーキ」と呼んだ。キャンベルによると、ある晩、チープと「食事をする栄誉に与り」、そして「チープが作ったスローケーキを食べたが、島で食べた中で最高のケーキだった」という(ただし、艦長がそんな物を口にする姿にやはり驚きを覚え、こうも記している。「艦長でさえ、そんな粗末なもので満足せざるをえなかったのだ!」)。

 遭難者たちは、喉の黒いウミウや顎の白いウミツバメなどの水鳥を捕まえようと奮闘した。だが、海の岩場に食べてくださいと言わんばかりに止まっているのに、そこに近づく手立てがなかった。小型艇は沈没船からの物資の回収作業にかかりきりだったのだ。泳げる者も、その海域の波とその季節には摂氏4度程度に下がる水温に思いとどまった。むやみに飛び込めばすぐに低体温症になり、やせ衰えた体では1時間ももたずに命を落としかねない。中には、鳥の捕獲を諦めきれず、手に入るだけの材料で即席の小さな板船を造る者もいた。そうした板船の中には、「パント舟〔平底小舟〕、樽舟、革舟など」があった、とバルクリーは記している。