依存症治療に効果抜群だったのは
カフェイン依存の経験をマンガにし、当時のTwitter(現在のX)に投稿すると、大きな反響があった。ヤフーニュースなどにも取り上げられ、2019年、厚生労働省から依存症啓発漫画を依頼される。
漫画を描くために取材を進め、依存症について調べていくうちに、「明らかにこれ、私の話だ」ということに気付き、依存症の自助グループにつながる。
三森さんが通い始めた自助グループは、アダルトチルドレンの自助グループだった。自助グループでは、依存症当事者や身近な人が依存症である人が集まり、過去や現在の体験を話し合う。
三森さんにとって自助グループは、依存症治療に効果抜群だった。
「大学を卒業しても、私は父からの虐待の後遺症で普通に働くことができる状況ではありませんでした。だからといって、一族で宗教をやっている実家には帰れないし、社会支援を受けていいなんて知りませんでしたし、20代前半は生活保護以下の収入で暮らしていました。父が沖縄に住民票を移すことを許してくれず、保険証を握られていたため、精神科にかかることもできずにいたのですが、自助グループにつながることができて、ようやく『私はここにいていいんだ』という居場所を獲得することができ、精神的に安定していきました」
これまでスクールカウンセラーに相談したことはあったが、有効な回答や対策が得られなかったため、続かなかった。似たような家庭環境で育った友だちと文通をしていたこともあったが、相手も不安定なため、いつしか途絶えてしまった。
しかし自助グループでは、誰にも言えなかったことを吐き出し、それを受け入れてもらうことができただけでなく、同じように苦しんできたたくさんの人と出会った。「1人じゃなかった」ということが分かり、長い間、苛まれ続けてきた孤独感が解消していった。
孤独感が解消していくと、何度も別れようとして別れられなかった彼と会わずにいられるようになる。
「帰る場所、頼る場所のない私にとって必要だったのは、『ここにいてもいいんだ』と思えるコミュニティや共同体だったのでした」
これまでの苦労が嘘のように、ようやく彼と別れることができた。
「トラウマ治療」をスタート
三森さんは2020年に埼玉に移住。その頃悩まされていた突然始まるフラッシュバックについて心療内科で相談したところ、複雑性PTSDと解離性障害を指摘され、「トラウマ治療(心理療法)」をスタート。
「トラウマ治療」はこれまで「認知行動療法」が中心とされてきたが、近年新しいトラウマ治療として、「EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)」という心理療法が注目されている。
「認知行動療法センター」や「医療法人社団 こころみ」によると、「認知行動療法」は、ものの受け取り方や考え方のバランスを取ることでストレスに対応できる心の状態にしていく精神療法(心理療法)の一種で、トラウマに真正面から向き合っていく治療法だ。対して「EMDR」は、眼球運動というリズミカルな動きを意識しながら過去の外傷記憶をあつかっていくことで、過去の外傷記憶の処理を促してくれる働きがあるという。