三森さんによれば、父方の祖父母は子どもに無関心なタイプだったという。おそらく父親は、幼少期に両親から適切なコミュニケーションを得られなかった。そのため、自分の子どもに対して異常なほど過干渉になってしまったのだろう。母親も、アルコールやギャンブルに依存し、不倫をする父親とその尻拭いをする母親を見て育ったため、同じようにコミュニケーションの仕方に難のある夫を選び、自分が育った家庭とよく似た家庭を築いてしまった。
祖父母も両親も、共依存だったのだ。
共依存とは、お互いに相手無しではいられず、自分ではなく相手にばかり常に意識が向いている状態のことだ。筆者はこれまで毒親育ちの人を多数取材してきたが、共依存家庭で育った人は、同じ共依存家庭で育った人と結びつきやすいように感じる。その理由を三森さんは、「慣れているから」とは別にこう説明する。
「共依存家庭で育った人は、そうでない“健康すぎる人”に対して劣等感で耐えられないという理由と、“健康すぎる人”から好かれにくいという理由があると思います」
おそらくそれに加え、これまで三森さんがエロ漫画を描いたり、ドロドロで辛い味噌汁を飲むなどして、“私は今ここに生きている”という刺激を得ようと必死にあがいてきたように、平穏な日常や安全な相手では満たされず、自ら刺激のある生活や危険な相手を求めてしまうのかもしれない。
カフェイン依存が始まる
何度ひどい目にあっても別れることができない三森さんは、彼を変えようと努力をし始めたが、学べば学ぶほど、「そんな男とは別れた方がいい」ということを思い知り、それでも別れられないのは、「自信がないからだ」という答えに行き着く。
そこで三森さんは、「本当に自分がやりたい、“絵を描くこと”を仕事にして成功すれば、自信ができて、別れられるはず!」と思い立ち、個人事業主として正式に開業。デザインやイラストを描く仕事に真剣に向き合い始める。
しかし、そこで始まったのが、カフェイン依存だ。
当時三森さんは、絵を描く仕事だけでは食べて行けず、アルバイトをしていた。アルバイトをした後、いざ絵を描く仕事に取り掛かろうと思っても、疲れや眠さで思うように捗らない。そんなときカフェインの錠剤を飲んで仕事をすると、元気になってテキパキ動けることを知り、手放せなくなっていく。
ある日、大家さんの都合で住んでいたアパートが取り壊されることになり、引越しのバタバタで錠剤を飲まなかったところ、ひどい離脱症状に襲われる。寝ても寝ても眠さがとれず、アルバイトも絵を描く仕事もままならない。カフェイン依存の怖さを思い知り、「カフェインで元気になるのは、元気の前借りでしかない」ことに身をもって気付いた三森さんは、錠剤を手放すことができた。