AIを積極的に活用したい「アイデア出しのためのヒント集め」
事実は逆で、よりよく使っていくためには、使わない部分もあるという考えだった。つまり、禁止業務が明示できてこそ、積極的に使える範囲が分かる。その最たるものが「積極活用業務」だ。
平井知事は会見で「文章の校正とか添削、読み手に応じた言い換え、翻訳みたいなこともあります。『アイデア出しのためのヒント集め』などでも使えるものはあるだろうと思います。リスクが最小限のものは積極的に活用していこうということです」と述べた。
「アイデア出しのためのヒント集め」については「先端技術と民主主義のあり方を考える研究会」で興味深い議論が交わされている。
「人間に対してアイデアを100個思いつくまで帰ってはならないと命じればハラスメントになるが、AIであればよい壁打ち役になるという論考がある。様々なアイデアを検討したり、様々な角度から検討したりするためのAI利活用は決して間違っていない。他方、『アイデア検討』としながらも、結局は出てきたものをそのまま貼り付けるようなやり方をする者も現れると考えられる。いかにして内心に立ち入ることなく、ガイドラインを適切に示すことができるかが課題になる」という意見が出た。
こうした危惧を受けて、新ガイドラインには「最終的なアイデアは利用者自身が検討すること」とわざわざ留意点を記した。
デジタル先進県の鳥取県では、生成AI以外のAI技術を既に多くの業務で活用している。音声を自動認識するAIは議事録などの作成に使っており、「年間約1万時間以上を創出」している。手書きの文字などを取り込んで文字データに変換するAI-OCRでは、「年間約7000時間を創出」という形だ。
効率化を「時間の削減」ではなく「時間の創出」と表現するワケ
これら生成AI以外のAIも含めて、平井知事は「自治体デジタル倫理原則を守りながら、積極的に活用していきたい」と語った。
ちなみに、鳥取県ではこうしたデジタル技術による効率化を「時間の削減」ではなく「時間の創出」と表現している。下田局長のこだわりがあるからだ。
「業務を効率化すると時間が生まれます。生まれた時間で、これまでに手を出せなかった新しいチャレンジができるし、今の仕事をもっと充実させることもできます。もちろん時間外業務の削減にもつなげられる。世の中では効率化は『削減』と捉えられがちですが、『削減』は『生み出した時間』の使い方の一つにすぎません。デジタル技術で目指すのは『創出』なのです」と下田局長は力説する。
ところで、こうした生成AI以外のAIも含めて検討すると、レベル4の「禁止業務」とレベル1の「積極活用業務」の間には、様々な業務があると分かった。「使う・使わない」の二者択一では分けられない業務だ。これらはリスクに応じて対応策を考えながら使っていくことになる。
現代社会はAI技術なくして機能しなくなりつつある。